研究課題/領域番号 |
24402042
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
広瀬 幸雄 関西大学, 社会安全学部, 教授 (10117921)
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研究分担者 |
大澤 英昭 独立行政法人日本原子力研究開発構, 地層処分研究開発部門, グループリーダー (70421633)
大沼 進 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (80301860)
大友 章司 甲南女子大学, 人間科学部, 准教授 (80455815)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高レベル放射性廃棄物 / 地層処分 / 手続き的公正さ / リスク認知 / 世代間主観的規範 / 感情 / 福島第一原発事故 / 国際比較調査 |
研究概要 |
本年度の主な研究成果は以下の2つである。 1.福島第一原発事故前後における高レベル放射性廃棄物地層処分政策の社会的受容に関する社会調査結果について分析した。原発事故の影響を受けて、地層処分の立地調査の受容、リスク認知、信頼などの要因は事故前よりも事故後に全体的に否定的な方向に変化したが、地層処分の調査の受容に関する要因連関の基本構造に直接的な変化を与えてはいなかった(大澤他,2012)。さらに、原発事故前後の2回の調査結果を構造方程式モデルにより分析したところ、地層処分の立地調査の受容には、そのリスク認知だけでなく、調査受容までの手続き的公正さや、家族・子孫といった世代を超えた土地に対する規範的価値観(世代間主観的規範)が重要な要因であることが明らかになった。さらに、受容を直接規定する上記の要因には、地層処分への感情や実施主体への信頼の要因が影響することも確かめられた(大友他,2012)。福島第一原発事故は地層処分の受容とその心理的要因にも影響を及ぼしていたが、それにもかかわらず、地層処分の受容とその規定因との関連は変化せず、その要因連関は安定していることを確認した。 2.フランスにおける高レベル放射性廃棄物の地層処分の社会調査のための予備的調査として、この問題の主要な利害関係者である放射性廃棄物管理機構(ANDRA)の担当者、地層処分候補地のビュールの地域情報フォローアップ委員会(CLIS)のメンバーへの聞き取り調査を実施した。また、フランスにおけるこの問題の専門家への聞き取り調査も実施した。その結果、地層処分の受容を規定する主要な要因として、地層処分の候補地決定までの手続きの公正さ(全国及び地域における市民参加の下での公開討論など)や地層処分の可逆性(将来技術によって廃棄物の取り出しの可能性)が重要であることを確かめた。今後それを参考に国際比較の社会調査を企画する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、国内での社会調査の実施とその結果の分析と、2年目に実施するフランスでの社会調査の準備のための現地での聞き取り調査が主な研究課題であった。いずれについてもおおむね予定通り実施することができた。国内での社会調査である福島第一原発事故の前後で実施した調査結果の分析から、地層処分の受容とその主要な規定因との関連が変化していないことから、調査仮説がおおむね妥当であることが確認できた。また、その結果をうけて、フランスでの社会調査のための聞き取り調査も予定通り進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
高レベル放射性廃棄物の地層処分政策の社会的受容の規定因について日本とEUとを比較する社会調査を予定通り実施する。地層処分の受容とその主要な規定因との関連について異なることがあるのか、その理由は何かを解明することが目的である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定通り、次年度はフランスにおいて社会調査を実施する。フランスでは次年度に地層処分の決定に重要な国民的な公開討論が実施される予定であるので、それが終了した時期に調査を企画している。あわせて、最終年度に実施するドイツでの調査に向けた聞き取り調査も予定している。
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