研究課題/領域番号 |
24402047
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
山本 須美子 東洋大学, 社会学部, 教授 (50240099)
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研究分担者 |
渋谷 努 中京大学, 国際教養学部, 教授 (30312523)
石川 真作 京都文教大学, 人間学研究所, 研究員 (20298748)
植村 清加 東京国際大学, 商学部, 講師 (30551668)
見原 礼子 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (70580786)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 移民第二世代 / EU / 学校適応・不適応 |
研究概要 |
今年度の研究成果は、以下3点にまとめられる。 第一は、EU各国(特にイギリスとフランスとドイツ)の移民教育政策と移民の子どもの学校適応・不適応に関する比較教育学における議論をメンバーが共有し、それに対して文化人類学的アプローチの有効性を各メンバーの調査結果を通して検証した。結果として、エスニック・コミュニティや当事者との継続的関わりに基づいた質的調査によって得られたデータは、比較教育学では明らかにならなかったエスニック集団内での差異、及び時間軸を入れたコミュニティや個人のライフコースの変化と学校適応・不適応の関係に言及できる点を方法論的意義として確認した。 第二は、イギリスとフランスとオランダの中国系第二世代の学校適応の要因を析出した。3国の中国系第二世代の学校適応の要因として、第一に親が子どもの成功のための手段として学校教育に高い価値を置いていること、第二に子どもが親の価値観を受け入れるような親子関係が成立していること、第三に第二世代が成功のための手段として学校教育に高い価値を置いていることを、中国系コミュニティの調査と中国系第二世代へのインタビュー結果に基づいて明らかにした。 第三は、ドイツとベルギーにおけるトルコの革新的宗教運動であるギュレン運動に関連する教育施設(学習塾)が、学校不適応問題を抱えた集団として従来の研究では扱われていたトルコ系第二世代の学校適応に影響を及ぼしていることが明らかになった。今後は、このような教育施設の出現が、国家的コンテキストがどのように関わっているのかをドイツとベルギーで比較する共に、イギリスやドイツも含めたイスラム系第二世代のイスラム・アイデンティティと学校適応・不適応の関連性を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査が予定通り進み、当初明らかにしたいと考えていたことがほぼわかってきているから。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、EUにおける移民第二世代の社会統合に関する質的調査に基づいた研究成果 The European Second Generation Compared(Amsterdam Univ.Press 2012)に対して、質的調査に基づいた本研究が何を新しく提示できるのかに焦点を当てて、研究メンバー各自が現地調査を進めた結果に基づいて研究成果をまとめる。 研究をまとめる当たっては、中国系第二世代とイスラム系第二世代の比較を中心に据え、文化的アイデンティティやイスラム・アイデンティティの保持と学校適応・不適応との関係性に言及するために、メンバーがお互いの調査結果を提示して議論する。当初はハンガリーでの調査は計画していなかったが、特に中国系第二世代に関してはハンガリーも対象とした方が学校適応の要因を比較検証できるので対象地域に含める。
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次年度の研究費の使用計画 |
メンバー1名が長期的に体調を崩したこと、もう1名が学務のために海外調査が無理であったので、海外調査費を次年度に回した。 昨年度で実施できなかった海外調査を、今年度は実施する。EUの中国系第二世代の学校適応・不適応を検討するに当たって、ドイツとハンガリーの中国系移民の調査の必要が生じたので、昨年度使用額をそれに当てる。
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