研究概要 |
本研究はタンザニア地塊外縁造山帯(太古代タンザニア地塊を取り囲む原生代造山帯)について,タンザニア地塊から原生代造山帯を横切って汎アフリカ造山帯に至る横断線の地質精査を行い,採集した岩石試料に先端的な地質年代学・岩石鉱物学・同位体地球化学の分析技術を応用することで,大陸地殻の改変と構造侵食の実像を読み解く.同造山帯に保持された約20億年前の沈み込みから原生代造山帯の一部が汎アフリカ造山運動(約5億年前)によって改変されるまでの約15億年間の地質現象を完全に読み起こす.初年度はタンザニア西部のウサガラン造山帯において野外地質調査と試料採集を行った.特にタンザニア地塊外縁造山帯の古原生代エクロジャイト相変成岩を含む変成岩岩体と新原生代(汎アフリカ造山運動時期)に地殻改編した変成岩体から岩石試料を採取した.現地から輸送した岩石試料は,1インチ径の円形研磨薄片に処理し,偏光顕微鏡―微ラマン―電界放出形走査電子顕微鏡/電子プローブマイクロアナライザー二次イオン質量分析装置による岩石記載ルーチンを開始した.また,国内唯一の193nm波長固体レーザーアブレーションシステムと誘導結合プラズマ質量分析装置によるジルコンの迅速大量U-Pb年代測定法のルーチン化を行い,様々な岩石試料からこう分離したジルコン粒子(数千粒子)についてテストを行った.今後,引き続き,変成岩が読み解く時間―空間―原岩―温度・圧力―化学組成情報に基づき「太古代安定地塊が完全に消滅せずに大陸地殻内部に保存される」様式を,定量的に評価していく.また,本研究を通して造山帯研究のための総合解析型ジルコン学の確立を目指す.
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今後の研究の推進方策 |
タンザニア現地での地質調査遂行に関して,特に岩石試料の国外持ち出しのための諸手続が複雑化しており,現地共同研究者らの協力が一段と重要になっている.また,急激な円相場の変動及び現地での燃料費の急騰があるため次年度以降の野外地質調査実施のため費用再見積などが必要になった.何れも現地共同研究者との打合せを重ねながら問題点を整理し,研究遂行に支障をきたさないよう適時適切に対応する.
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