研究課題/領域番号 |
24403012
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長谷川 卓 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (50272943)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 白亜紀 / OAE / 太平洋 / 深層水 |
研究実績の概要 |
平成25年度には,クイーンシャーロット諸島にて,OAE2相当層準から試料採集を行った.同諸島のグラハム島および同島に近接するリナ島の海岸線を調査し,まずGPSを用いたルートマップを作成した.同諸島では干満の差が最大で8mにも達するため,干潮時にリナ島に徒歩で渡ることができるが,渡島点となる海峡から露頭までの距離が長いことと,取り残される危険があるため1日の作業時間は2時間程度と短い.調査では非常に微細なラミナが発達する砂質泥岩がセノマニアン階のOAE2層準より下位に発達していることが明らかになった.またセノマニアンに対応するイノセラムス化石を得た.2セクションで泥岩試料を採集した.OAE2層準に近づくにつれ,むしろ底質の酸素環境は改善している(バイオターベーションが徐々に強くなってくる)ことも明らかになった.予察的な炭素同位体比分析によれば,2セクションともOAE2層準の少なくとも下半部(炭素同位体比エクスカーションの下半分)を保存している.その上位は砂岩礫岩互層(ファンデルタ堆積物)のため,炭素同位体比は測定していない. 以上のことより,北東太平洋の中緯度付近では,OAE2に先立って無酸素化が生じ,OAE2層準に向かってむしろ回復していったことが明らかになった.ニュージーランド高緯度や日本(北海道)でもOAE2層準はむしろ酸化的になっていることが知られており,テチス海・プロト大西洋および太平洋赤道域付近など世界の他の地域とは,太平洋中・高緯度の環境が大きく異なっていたことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
機器の故障があり,これを修復するのに時間を要した.研究期間を延長する(翌債)を立てることで機器修復と分析は進行したが,当初予定よりは遅延した.25年度採集した試料の有機物の分析を主に行った.分析項目としては,炭素同位体比分析の他に,抽出性有機物バイオマーカーである.26年度には追加調査を行っている.その結果,2セクションで炭素同位体比変動曲線を得ることができ,また抽出性有機物の一部として燃焼期限有機物(多環芳香族炭化水素類:PAHs)が検出され,これを追跡することで古環境の解読を進めることができることが分かった.それにより,やや遅れているものの,当初目的を達成する道筋がついたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
堆積場の環境がセノマニアン紀において非常に酸素レベルが小さい状況であったことが分かっている.26年度は抽出性有機物を用いて,非常に興味深い成果が得られた.詳細は26年度の実績報告書に報告する.今後は,炭素同位体比層序とバイオマーカーから得られた研究成果を学会および論文を通じて公表していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
25年度中に炭素同位体比分析に使用する装置に故障が発生し,データ採取が一部できなかったため装置運用に関する予算の繰り越しを行った.
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次年度使用額の使用計画 |
26年度に入り,装置の修理調整を依頼し,使用可能としたうえで信頼性の高い炭素同位体比データを出していく.繰り越した研究費は機器修理のために使用した.
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