研究課題
平成25年度にクイーンシャーロット諸島にて,OAE2相当層準から採集した試料を用いて炭素同位体比分析を行った.セノマニアン階に対応する層準では,非常に細かいラミナが発達しており,無酸素状態が推定されたが,その層準を中心に,主要な層準について有機物の抽出を行い,ガスクロマトグラフおよびガスクロマトグラフ質量分析装置にて分析を行った.その結果,当地の有機物熟成度はビトリナイト反射率(R)換算値で1.3%程度であり,バイオマーカー(ホパノイドやステロイド)の分析には適さないことが分かった.R換算値は,上方に向かって徐々に減少する一般的傾向を描いていた.一方で,陸域環境を理解するうえで重要な植物等の燃焼に由来する有機物(多環芳香族炭化水素:PAHs)が検出された.そこで,本研究ではPAHsの層序的変動を追跡した.その結果,PAHsはR換算値の変動傾向とは異なって,大きく変動しつつ増加していく傾向を示した.このことはPAHsの増減の原因がR換算値の増減(続成の程度)と本質的に異なっていることを示し,PAHsが続成プロセスで形成されたことを否定することができる.従って,PAHsは燃焼に起因して形成され,OAE2の期間に徐々に陸域では自然発火による火災の頻度が上昇していったことが示唆された.また,このことは,ハドレーセルの拡大に伴って,PAHs供給場が西岸海洋性気候から地中海式気候のような乾湿の季節差が大きい環境へと変化したことを示しているのかもしれない.OAE2に関連する全球的気候の変動を理解するうえで重要な資料となる可能性がある.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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