研究課題/領域番号 |
24404004
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
藤野 毅 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70282431)
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研究分担者 |
西垣 功一 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10107378)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 底生生物 / ヒゲナガカワトビケラ / 焼畑農業 / 栄養塩流出 / 環境保全 |
研究概要 |
2012年9月から、現在の調査地区であるチン州南部のミンダット周辺を流れるChee川とカンペレ周辺を流れるGadin川において、水質と底生生物群集を調査した。水質に関しては、雨季(9月)と乾季(11月)で栄養塩濃度に極めて大きな違いが確認された。当地では焼畑農業が生活の基盤となっているため、雨季には土砂とともに高い窒素・リン濃度が記録され、斜面からの供給が考えられる。この現状を衛生画像によっても確認し、GISを用いて傾斜の高さも確認した(Fujino et al.,2013)。 底生生物種においてはトビケラ目種を中心に種の確認を進めた。幼虫のみならず、ライトトラップによって夜間に成虫を収集し、種同定を専門家(野崎隆夫博士)の協力のもとで行った。過去のミャンマーで記録された文献を整理した結果、本研究からは10科、15属、21種が同国初記録となった(Hnin et al.,2014)。中でも、ヒゲナガカワトビケラ属(Stenopsyche sp.)では同一採集地点にも関わらず5種が確認された。それぞれ対応する幼虫は異なった形態的特徴を有しており、遺伝子解析(GP法など)により親子関係を検証中である。これより、同属においては幼虫段階で種同定が可能になると期待される。 また、現地では住民に対して水質保全に関するセミナーを開いた。同時に、地元住民に対して環境保全に関する意識調査(社会アンケート)を実施し、生活様式や専門知識のレベルを把握した(Senaviratuna et al., 2014)。水環境保全は重要との意識は認めらたが、それ以前に物資を運ぶ移動手段とインフラの整備が強く求められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
底生生物種においては遺伝子解析を行うことで幼虫段階から優占種を判別できるようになる。地元で複数回環境セミナーを開き、社会調査も実施できたことから、環境保全に向けて具体的な政策提言が行える段階にきている。技術供与においては次の段階で実践したい。
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今後の研究の推進方策 |
焼畑による河川水質の変化の影響について、衛生画像の解析と継続的な水サンプリング(地元住民に依頼済み)により因果関係を明らかにしていく。 底生生物種の確認においては、トビケラ目以外にカワゲラ目・カゲロウ目にも着目する。 このたびの調査研究は、この間に知り合った研究協力者の手によってミャンマーの他の地域にも展開されつつある。多様な少数民族が生活する山岳地域全体に対して現状の理解と問題の解決に向けた議論が深まるであろう。
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