研究概要 |
平成24年度は,メラピ火山噴火後の,PUTIH川流域およびGENDOL川流域の水文環境および土砂移動の経年変化を把握するための準備,2010年噴火時の被害・警戒避難実態に関する情報収集を目的に,2012年9月9日~20日、2012年11月5日~10日、2013年3月3日~9日にインドネシアへ渡航した。 火砕性堆積物の分布・材料特性,地表面の透水性,植生の回復状況,河床の状況を調査した結果,噴火により火山灰が10~20cm程度堆積したPUTIR川上流域においては,雨水による浸食が進み火山灰の堆積厚が5~10cm程度に減少していること.2011年と比較すると、2012年では火山噴出物が堆積することによって生じた裸地面への草本の侵入が急速に進んでいることがわかった.一方,噴火により火砕流堆積物が数10mの厚さで堆積したGENDOL川上流域においても雨水による浸食が進行しリル・ガリーの発達が著しく,草本の侵入があまり見られないことがわかった.ガジャマダ大学と共同で,PUTIH川中流のMranggenに水位計・IPカメラを,GENDOL川上流のKALIADEMに雨量計を,下流のTEMPRANに水位計・IPカメラを設置した.2011年末までに設置が完了していた雨量計と合わせると,各流域に雨量計2台,水位計・IPカメラ1台が設置され水文観測体制が整った. ラハール・洪水による災害実態について、バライ・砂防にて情報収集するとともに,新聞記事を収集・整理した結果,2012年~2013年の雨期についてはPUTIH川,GENDOL川ともに洪水流・土石流による被害はほぼ無かったことがわかった.火砕流発生時の警戒避難実態については、バライ・砂防には詳細な情報は残っていなかったため,ガジャマダ大学の共同研究者へ地元コミュニティへの聞き取りを依頼した. 日本国内においては,1990~1994年に実施された科学技術庁振興調整費による「火山地域における土砂災害予測手法の開発に関する国際共同研究」の成果報告書を入手し、当時実施された研究をレビューするとともに,洪水・土石流による災害予測に使用する数値シミュレーションプログラムを構築した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度に予定していた,PUTIH川,GENDOL川の現地調査.水文観測体制の準備は予定通りに進行しているが,数値シミュレーションプログラムの開発が遅れたため,火山噴火前の「平穏期」,火山噴火後の土砂生産・流出,河床変動予測が終わっていないため(3)と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,現地調査・観測を継続し,データの収集に努めるとともに,取得したデータの解析を進める.進行が遅れている数値シミュレーションによる災害予測・実測結果との比較については,データ整理,解析作業の補助者を雇用することにより遅れを取り戻す.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度,直接経費に余剰額が生じた主な理由は,当該助成金により設置を予定していた水位観測施設を,ガジャマダ大学の負担により設置することができたためである.直接経費の余剰額については,数値シミュレーションによる災害予測の遅れをとりもどすために作業補助者を雇用する費用に充てる.
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