研究概要 |
氷河およびそれを取り巻く環境は,気候変動の影響を強く受けやすい。特に本研究の対象地域(ボリビア国ラパス)には,熱帯氷河という地理的特徴,および半乾燥地域という特性の中,水資源の多くを氷河の融解水に依存しているという水工学的な特徴がある。そのような背景を受け,氷河流域からの流出水の水質形成に対する温暖化の影響評価について着目し研究を実施している。 本年度は,氷河下流部の流域における水質形成過程に関する検討を行った。また,水資源の観点から,対象流域の末端に存在しているトゥニ貯水池における気候変動の影響を考慮した水質予測検討を実施した。水質形成過程に関しては,トゥニ貯水池の集水域となっている主に二つの河川流域(コンドリリ流域とワイナポトシ西流域)における多地点の採水観測を行い,栄養塩やイオン濃度などの水質分析を行った。特に着目したのは,流域内の生態系とも関連しうる硝酸態窒素の動態である。硝酸イオンを構成する酸素と窒素の各同位体構成をもとに,各試料に含まれる硝酸の起源(大気,土壌)や同化,脱窒などの影響度に関して推定を行った。トゥニ貯水池における水質検討は,国内の貯水池に対しても適用実績のある鉛直一次元水理・水質解析予測手法を用いて,貯水池内の水温及び水質(特に一次生産を示すクロロフィルを指標とする)を行った。また気候変動の影響に関しては,既往研究にある将来気候予測の計算結果およびそれを用いた流出解析結果を援用して,気温及び貯水池流入出量について,現在と将来のそれぞれの条件を設定し,水温と水質の予測検討を実施した。
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