研究課題/領域番号 |
24404017
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡部 徹 山形大学, 農学部, 准教授 (10302192)
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研究分担者 |
本多 了 金沢大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40422456)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬剤耐性菌 / 抗生物質 / 水圏現象 / 微生物 / 東南アジア / 耐性遺伝子 / 国際研究者交流 / タイ王国 |
研究概要 |
【タスク1:チャオプラヤ川流域における抗生物質耐性菌の検索】バンコク首都圏で断続的に行われているデモの影響を考慮して,予定されていた下水処理場,畜産施設,養殖場,病院などでの現地調査をキャンセルした。 【タスク2:耐性遺伝子の検出と遺伝情報にもとづく耐性菌発生源の推定】チャオプラヤ川流域で単離された大腸菌(計389株)を対象に,26種類のテトラサイクリン耐性遺伝子の一斉検出を行った。その結果,132株が何らかの耐性遺伝子を有していた。検出頻度はtet(A)(94株)が最も高く,次いで,tet(B)(39株),tet(M)(5株),tet(D)(1株)の順で高かった。前年度にも同様の耐性遺伝子の一斉検出を行ったが,その際には,耐性遺伝子が検出された株はわずか4株のみであった。ハイスループットqPCR装置を用いたスクリーニングとシーケンス解読による確定試験における条件設定を見直したことによって,検出感度が向上した。tet(A)およびtet(B)が検出された大腸菌の発生源を推定するために,該当する菌株の系統解析を開始した。 【タスク3:各種発生源における耐性菌発生ポテンシャルの評価】前年度に定常運転が可能となった活性汚泥法のベンチスケールリアクターを用いて,都市下水処理プロセスにおける耐性菌発生ポテンシャルを評価した。第一の実験として,異なる曝気時間で模擬下水の回分処理を行ったところ,リアクター内の大腸菌の耐性スペクトルが変化することが確認された。ただし,変化の傾向は抗生物質の種類によって異なっていた。第二の実験として,ノルフロキサシン(バンコク首都圏の下水処理場で最も高い濃度で検出された)を異なる濃度で添加した模擬下水の回分処理を行ったところ,添加濃度と大腸菌のノルフロキサシン耐性率の上昇との間には,明確な関係は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タスク2および3は順調に進展している。タスク1のみ,バンコク首都圏で断続的に行われているデモの影響を考慮して,予定されていた下水処理場,畜産施設,養殖場,病院などでの現地調査をキャンセルしたため,やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
【タスク1:チャオプラヤ川流域における抗生物質耐性菌の検索】前年度キャンセルした現地調査を実施する。ただし,調査対象を病院排水に絞る。 【タスク2:耐性遺伝子の検出と遺伝情報にもとづく耐性菌発生源の推定】当初の予定通りに,系統解析により,テトラサイクリン耐性遺伝子を保有する大腸菌の起源推定を行う。また,テトラサイクリン以外の抗生物質についても,耐性遺伝子の検索と耐性大腸菌の発生源の推定を行う。 【タスク3:各種発生源における耐性菌発生ポテンシャルの評価】ベンチスケールリアクターを用いて,引き続き都市下水処理場の耐性菌発生ポテンシャルの評価を行う。タスク1の結果より,医療機関における耐性菌発生ポテンシャルについても評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
バンコク首都圏で断続的に行われているデモの影響を考慮して,予定されていた下水処理場,畜産施設,養殖場,病院などでの現地調査をキャンセルしたため。 キャンセルした現地調査を次年度に実施する。ここで生じた次年度使用額は,その調査のための旅費,消耗品,および抗生物質の分析委託費用として使用する予定である。
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