研究課題/領域番号 |
24404024
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
高島 勲 秋田大学, その他部局等, 名誉教授 (50163192)
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研究分担者 |
尾西 恭亮 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20402969)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 地中熱利用冷房 / 省エネルギー / 熱帯地域 / インドネシア / 地熱多目的利用 / 地球環境 |
研究概要 |
研究協力者の所属するバンドン工科大学で地下システムと熱交換器を使用した冷房システムを完成し、効率、周辺の地下温度、水分量などを連続測定中である。システムの特徴は、地下抽熱システムが2mの浅部水平配管、地上の機器がインドネシアで市販されている家庭用エアコンの風冷ファン部分をプレート型熱交換器に置き換えるたものであり、現地ですべての機器が調達できる。このシステムにより、特別な技術や機器の輸入等がなくても導入可能であり、超低価格を実現している。目的の一つである省エネルギーの評価では、2013年5月の既存エアコンとの消費電力比較で約25%という結果が得られた。 地下環境については引き続き測定を実施中である。平常時の2mの地下温度が19-22℃であり、冷房運転時には地下配管部で27℃まで上昇する。しかし、運転休止時には24時間以内にほぼ平常値まで低下する。このような変動観測結果はまだ短期間であり、年オーダーの長期観測結果とそれによる長期のモデル計算を実施する予定である。 完全な熱帯気候であるジョグジャカルタのペグバングマン大学における同様の実験計画も進行中であり、基礎となる地下温度と土壌水分量の観測を継続中である。 研究成果発表会をバンドン2013年9月に工科大学にて実施し、地方公共団体関係者を含む約50名の参加があった。また、2014年3月には東・東南アジア地球科学科学調整委員会(CCOP)のメンバー約20名が本研究システムを視察した。これらの成果発表と広報により、西ジャワ地方政府の建物での実験計画が進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バンドン工科大学のシステムについては、熱交換器の破損があり、その交換に多少の期間を要したため、実験の中断があったが、適切に修理が行われ、データ収集も順調である。これまでは、データ収集を完全収録する方針で進めてきたが、地下環境の変動は比較的長期間で緩やかに変動するので、連続記録は保持するが、解析は月ごとに1週間程度として効率をあげている。 海外研究のため、現地訪問の頻度が限られており、故障対応では現地協力者等の協力が不可欠である。この点についても、現地作業を共同で行うことで内容の理解が深まっており、適切な対応を取ってもらえる状況ができつつある。
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今後の研究の推進方策 |
バンドン工科大学は高地であり、真の熱帯地域とは気候条件が異なる。このため、低地のジョグジャカルタのペグバングナン大学構内でのシステムを完成させ、実験を開始する。現在は地下1.5mに100m延長の抽熱配管がなされているが、追加の100mを設置する。この設置工事では、掘削による土砂の処理が容易で環境破壊が著しく少ない幅10cm程度のトレンチによる縦型配管を予定している。 バンドンでは、本研究を発展させた形で西ジャワ地方政府が100m深の掘削井を使用した地中熱冷房システムを計画中である。その運転と地下観測について協力依頼があるので、実施中の2地点の試験にあわせてデータを取得し、解析を行う予定である。また、東・東南アジア地球科学科学調整委員会(CCOP)が行っている広域の地下水流動と地中熱対象地域の地点評価研究(必要な地中熱配管規模の評価の基礎資料)との連携により、総合的な成果の獲得を目指す。 直接メンテナンス等の不可能な海外での実験であり、故障等の生じない強固な設備の構築を心掛けているが、トラブルの発生を完全になくすことは困難である。そのための対処と技術移転のためには、現地の研究協力者が対応できる知識の共有が必要である。そのための努力を進め、かなり理解されつつあるが、共同作業や講義等一層の活動が必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
インドネシアにおいて研究発表会を企画し、相当の予算を計上していたが、会場を共同研究機関であるバンドン工科大学とし、同大学の援助もあり、予定額を大きく下回る金額で実施できた。また、物品の多くが現地購入で対応できたため、経費節減が可能であった。 次年度は研究の最終年度であり、成果報告書等に充当する予定である。
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