研究概要 |
バイカル湖は,メタンハイドレート(MH)が存在する唯一の淡水湖であり,代表者らはこれまでに湖底で多数のMH存在域を発見した.中央湖盆の湖底ククイキャニオン域では10カ所のマウンド/泥火山にMHが発見され,更に多くの未調査マウンド/泥火山があり,世界でも例がないMH密集存在域と考えられることから,生成環境と機構を解明することは重要である. 平成24年度は本研究調査の初年度であり,申請した研究計画に沿って(1)準備会合を経て運営委員会を設置,(2)既存の物理探査データの解析とコア採取候補地点の選定,(3)フィールド調査計画(日程,参加者,作業内容等)の作成を,いずれも海外共同研究者および国内連携研究者とおこなった.調査船および湖底堆積物採取用重力コアラーも,研究計画に沿って準備をおこなった.これらの計画および準備に基づき,ククイキャニオンを対象に物理探査(マルチビーム)三次元マップで明らかになったマウンド/泥火山でコア採取をおこなった.その結果,新たに2カ所でメタンハイドレートを産するサイトを発見した.MHを含む約3mの湖底表層堆積物コア試料は,重力コアラーを用いて採取に成功した.採取後の堆積物コア試料は調査船内で直ちに縦に二分割し,MHは直ちにMH解離水採取実験に供する部分とMH結晶解析等に供する部分(液体窒素温度で保存)に分けて保存した.間隙水は,堆積物コア試料を現場で遠心分離して採取した.間隙水溶存ガスは,堆積物をバイアルビンに採取・密栓し,気相ヘッドスペースから採取した.調査船内および陸水学研究所(イルクーツク市)において,湖底堆積物試料の土質試験をおこなった.いずれも,交付申請書に記載した計画に沿った実施を達成した.堆積物コア間隙水溶存ガス成分測定結果より,GHが目視観察されないコアにおいても,湖底面直下で急激にメタン濃度が高くなることを明らかにした.間隙水中溶存イオン濃度測定結果より,湖水と組成の異なる水がコア深部に存在することが示唆された.溶存ガスを含む水が深部から湧昇していることが示唆されるが,平成24年度の本研究結果のみからは結論づけることは困難である.次年度以降の調査結果とあわせて,生成環境を明らかにして生成機構を解明することが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請した研究計画に沿って(1)準備会合を経て運営委員会を設置し,(2)既存の物理探査データの解析とコア採取候補地点の選定,(3)フィールド調査計画(日程,参加者,作業内容等)の作成を,いずれも海外共同研究者および国内連携研究者とおこなった.調査船および湖底堆積物採取用重力コアラーも,研究計画に沿って準備をおこなった.調査を実施した結果,ククイキャニオンにおいて新たに2カ所でメタンハイドレートを産するサイトを発見できたこと,採取された試料の測定で新たな知見が得られたことから,交付申請書の目的の達成度はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
研究調査の初年度である平成24年度の結果を参照して,平成25年度以降のMH調査候補地点(マウンド/泥火山)を決定し,堆積物コアの採取を実施する.採取試料の化学解析(ガス,水等試料)・同位体解析(ガス,水等試料)・土質試験および物理探査を行う.堆積物中でのガス・水・泥の起源の考察をおこなうとともに,それらの堆積物中および間隙水中での移動・混合とMH産状との関係より深部構造の把握を試みる等,当初の研究計画に沿って推進する.
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次年度の研究費の使用計画 |
申請研究経費の中で最も割合が大きい経費は,フィールド調査に要する傭船料分担費である.フィールド調査には,派遣のための外国旅費および貨物輸送費も必要である.平成25年当初からの急激な円安は,海外研究調査である本申請研究にとって,調査船傭船料および外国旅費を大きく膨らませている.そこで,学会発表旅費等の成果発表に係る費用等を圧縮して残し,次年度の研究費と合わせて使用する次第である.
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