本研究は、間伐によるマングローブ再生林の健全な育成とCO2固定の効率化を図る森林管理モデルの作成を目的としている。本年度は、インドネシア・ランプン州・マルガサリにおいて、前年度の間伐処理から1年が経過した21年齢オオバヒルギ再生林を調査した。間伐区(A、B)と対照区(C)における年間のDBH生長量は、それぞれ0.77±0.45、0.57±0.62、0.30±0.28 cm/ 年となり、間伐区で個体立木の生長が促進されることが明らかになった。間伐前の過密な立木群内の相対照度は2.24%と極めて低かったが、間伐直後はAおよびB区でそれぞれ18.6および15.2%へ大きく増加した。間伐から一年後、間伐区の相対照度は5.43及び4.17%まで減少し、C区の3.18%と類似していた。これは間伐によって形成されたキャノピーギャップに枝葉が伸び、林床に届く光量が減少した結果と考えられる。しかしながら、キャノピー内部の相対照度は、A区はC区よりも1.0 m深で2倍(25%)、1.5 m深では3倍(14%)大きかった。このことは間伐後、キャノピー構造が変化したことを示している。同時に、ヒマワリを用いた間引きの効果を検討した試験において、生育期間を通して60 cm密度で育成した区(271g/m2)に対し、30 cm密度で植付け、その後60 cm密度へ間引きした区で総乾物量は282g/m2と増大する間引きの効果が確認された。また、マレーシア・マタン・マングローブ保護林に出向きマングローブ材を用いた炭及び建設用材の生産について調査し、間伐材の経済的活用の可能性を確認した。さらに、環太平洋諸国における農業環境問題とその対策に関する国際シンポジウム(Ⅱ)にインドネシア・ランプン州ランプン大学から3名の研究者を招聘し、地域経済に対するマングローブ植林の課題と可能性について検討を加えた。
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