研究課題/領域番号 |
24405003
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
康 峪梅 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (70284429)
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研究分担者 |
櫻井 克年 高知大学, その他部局等, 副学長 (90192088)
小崎 隆 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (00144345)
伊ヶ崎 健大 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (70582021)
川本 純 京都大学, 化学研究所, 助教 (90511238)
三原 久明 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (30324693)
角野 貴信 鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (50511234)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中国 / 内蒙古 / 草原生態系 / 広域 / 炭素 / 窒素 / 微生物 / 土壌 |
研究概要 |
ホロンバイル市の草原土壌で、土壌呼吸速度は明確な季節変動を示し,全ての処理区で7月上旬に最高値を記録した。土壌呼吸速度の平均値は対照区で195mgC m-2 h-1,採草区で174mgC m-2 h-1,放牧区で130mgC m-2 h-1であった。土壌からの炭素放出量は推定でそれぞれ2.13,1.97および1.37 MgC ha-1y-1であった(対照区≒採草区>放牧区)。このことから対照区と採草区では土壌に炭素が貯留されているが、放牧区では土壌が炭素の放出源となっていることが推察された。 採草区と放牧区土壌よりそれぞれ採取された低温適応細菌3株について硝酸還元活性を測定することで、低温適応細菌による草原土壌での窒素循環機構について解析した。その結果、放牧区土壌より採取された3株に比べて、採草区土壌より採取された3株の亜硝酸生成量が約2倍高いことが示された。この結果は、寒冷期の草原土壌において低温適応細菌による活発な脱窒プロセスの存在を示している。同時に、草原退化が進行した土壌中では硝酸還元能を有する菌株が減少している可能性を示しており、土壌細菌の硝酸還元酵素の存在、および低温での硝酸還元活性が草原土壌の診断や退化度合いの指標となること示唆している。 また、ホロンバイル市の放牧区では、土壌の全炭素、全窒素含量は対照区と比べてそれぞれ0-5cmで10.9%と10.4%、5-15cmで19.5%と17.5%減少した。一方、通遼市では土壌の全炭素、全窒素含量はそれぞれ0-5cmで82.1%と87.4%、5-15cmで77.5%と77.3%減少した。このように、両市の対照区土壌の全炭素と全窒素含量が同程度であるにもかかわらず、通遼市の放牧区では大幅の減少を示し、ホロンバイルから通遼市にかけて広域で草原退化が進んでいることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は予定通り、広域の草原退化域に関する調査を行うため、内蒙古自治区通遼市で現地調査を実施し、土壌、植生の試料を採取した。試料の分析も予定通り進んでおり、本研究は当初の計画通りに順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には興安盟のウランホット市と通遼市の二ヶ所で現地調査を行う計画である。8月に現地入りして、広域の草原退化域を選定し、それぞれ現地調査と試料採取を行う。広域の草原退化過程における土壌、植生の変化と炭素・窒素収支および二酸化炭素、亜酸化二窒素放出量の測定,微生物特性の評価を行う。また、冬季(11~12月)に再び現地入りし、窒素変換能に優れた耐冷性微生物の選抜を行い、さらに微生物資材の開発を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究地の気候状況から現地調査が夏になるため、試料の分析時間が短く、年度内で終了できなかった分析項目がある。それらは土壌の粒径組成、交換性陽イオン含量、陽イオン交換容量である。 上記期間性項目については現在分析を進めているところで、7月末までに終了する予定である。従って、生じた次年度使用額はこれらの分析費用に充てる計画である。
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