研究課題
本研究ではこれまでに得たホロンバイル市、シリンゴル盟および通遼市のデータに、新たに分析した赤峰市の結果を加え、四地域の比較を行うことによって、内モンゴル自治区における広域草原退化の特徴を明らかにすることを目的とした。H26年度は赤峰市のハイスラムとジブトゥの二牧場で、放牧区と禁牧区についてそれぞれ土壌と植生の調査、分析を行った。いずれの調査地においても、禁牧区より放牧区で地上部バイオマス、土壌の全炭素、全窒素、粘土、シルト含量およびCECが減少傾向を示し、砂含量が増加傾向を示した。内モンゴル自治区では広範囲にわたって過放牧により植生や土壌の理化学性が悪化していることがわかった。禁牧区、放牧区ともに通遼市>赤峰市>シリンゴル盟>ホロンバイル市の順に土壌の理化学性が悪化していた。一方、表層0-5cmの土壌微生物バイオマス炭素(Cmic)と窒素(Nmic)量は禁牧区と放牧区でそれぞれ281 と5.4 mg kg-1、39 と 2 mg kg-1であった。草地の平均CmicとNmicは520 and 77 mg kg-1と報告されており、内モンゴル土壌のCmicとNmicは低く、その傾向は放牧区でより顕著であることが示された。また、禁牧区のCmicとNmicは放牧区より有意に高かった。CmicとNmicは土壌の含水率、pH、全炭素、全窒素、CEC、シルト及び粘土含量と正に相関し、砂含量と塩基飽和度と負に相関した。放牧による影響は、通遼市>赤峰市>シリンゴル盟>ホロンバイル市の順に大きかった。地域によって放牧による草原退化の影響が異なり、通遼市>赤峰市>シリンゴル盟>ホロンバイル市の順に草原退化が進んでいることが示唆された。植生や土壌の理化学性の悪化が放牧区でより顕著であることから、自然条件に加えて、過放牧などの人為の影響が広域の草原退化にさらに拍車をかけていると考えられた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Soil Science and Plant Nutrition
巻: 未定 ページ: 未定
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