研究課題/領域番号 |
24405007
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥田 昇 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30380281)
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研究分担者 |
中野 伸一 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (50270723)
陀安 一郎 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (80353449)
小島 久弥 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (70400009)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メタン酸化細菌 / 嫌気的メタン酸化 / NC10 / CARD-FISH法 / メタン栄養食物網 / 安定同位体混合モデル / 表層-底層カップリング / 脂肪酸分析 |
研究概要 |
本研究は、亜熱帯に位置する台湾・翡翠水庫において、メタン酸化細菌叢、および、その出現パターンを解析するとともに、メタン酸化細菌を起点としたメタン栄養食物網を定量的に評価することを目的とした。2013年の夏季および冬季の湖水試料からDNAを抽出、16S rRNA遺伝子のPCR増幅とクローニングを経て塩基配列の決定を行った。解析の結果、主要なメタン酸化細菌はNC10に属する種であることが判った。本グループは、2012年冬季の試料でも検出されたことから、調査地の深水層において、年間を通して優占していることが示唆された。また、CARD-FISH法を用いて、メタン酸化細菌群集の湖内時空間変異を解析した。メタン酸化細菌密度は、調査期間を通して2倍強の変動を示し、溶存メタン濃度の高い深水層に細菌密度のピークが認められた。全層から出現するメタン酸化細菌主要3群(Type I、type II、NC10)の構成割合は、平均してそれぞれ16、32、52 %であり、特に最深部で嫌気性メタン酸化をおこなうNC10が優占した。続いて、湖沼生態系の炭素循環におけるメタン栄養食物網の相対寄与を評価するために、炭素安定同位体分析手法に基づく食物網解析を実施した。安定同位体混合モデルによる解析の結果、動物プランクトン生産に対する深水層のメタン酸化細菌由来炭素の寄与率は最大で15%に達し、特に、鉛直混合が起こる冬季に増加する傾向を示した。さらに、冬季のメタン酸化細菌寄与率には明瞭な年変異が見られ、湖水の成層や攪乱をもたらす気象物理プロセスがメタン栄養食物網に影響する可能性が示唆された。現在、安定同位体手法に基づくメタン酸化細菌生産依存率推定値の妥当性を検証するために脂肪酸分析手法の開発に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究により、特殊な微生物生理特性を有する嫌気的メタン酸化細菌(NC10)が本湖沼において周年存在することを明らかにした。本グループは、これまで湖沼堆積物や排水口など特殊な環境での観察が報告されてきたが、本研究は、NC10が湖水中に常在することを発見した初めての事例と位置付けられる。今後、その生理機能の解明や本湖における炭素循環における役割解明へと研究の展開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
台湾側共同研究者と密に情報交換をしながら既存試料の分析とデータ解析を進めるとともに湖沼のメタンフラックスを推定するためのモデル構築を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外渡航調査人数と成果発表の回数がが予定より少なかったため。 最終年度に向けて国際ワークショップおよび学会・論文発表に次年度繰り越し分を配分する。
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