研究課題/領域番号 |
24405010
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
伊藤 文紀 香川大学, 農学部, 教授 (50260683)
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研究分担者 |
三浦 徹 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 准教授 (00332594)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アリ / 社会構造 |
研究概要 |
真社会性昆虫における繁殖カストと労働カストの形態的特殊化は、社会組織や個体間コミュニケーションの複雑化と深く関係している。その特殊化の生態学的・行動学的・進化発生学的基盤の理解は、生物における個体間の協力関係や社会組織の進化を考えるうえで重要である。過去20年にわたる海外調査経験から見いだされたこの問題を解明する上で最も好適と思われるGnamptogenys属を主な対象として、国際共同研究によってカスト特殊化の進化とその意義を多面的に解明することを目的に調査した。平成24年度は、タイの2か所とマレー半島でG.menadensis種群を中心にGnamptogenys属各種のコロニーを探索・採集し、その社会構造の概要を調査した。タイ南部ではGnamptogenys bicolorのコロニーが採集され、従来調査した地点とは異なり、著しく体サイズが小さい有翅女王が多数生産されていることが明らかとなった。このような小型女王は社会寄生種の可能性があるため、分子生物学的手法を用いてDNAを調査したところ、コロニーメンバーとの間に相違は見いだせず、タイ南部個体群では、この小型有翅女王が繁殖しているらしいことが示された。マレー半島では、従来Gnamptogenys bicolorが生息していたマラヤ大学構内で本種を一切見いだすことが出来ず、またマレー半島各地でも一切発見できなかった。G.bicolorは熱帯雨林地域で稀な種であった。G.menadensis種群以外では、数種のコロニーが採集され、いずれも通常の有翅女王が繁殖していた。これらの比較を通じて、東南アジア産Gnamptogenys属では、有翅女王が繁殖する単女王コロニーで、コロニーサイズが20個体前後、女王と働きアリの卵巣小管数はそれぞれ4本と2本の種が大部分であるが、G.menadensis種群の2種だけが著しくコロニーサイズが大きく、卵巣小管数も多く、働きアリ繁殖が進化した特異なグループであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東南アジア産Gnamptogenys属の社会構造の特性の概要が明らかになりつつあり、また興味深い社会構造を示す個体群が発見されたため。
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今後の研究の推進方策 |
東南アジア各地の調査を継続するとともに、対象種の分子分類学的研究を一層進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者の家庭の事情により1度海外調査に行けなかったために生じた。この助成金をふくめて海外調査を実施する。
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