研究課題
基盤研究(B)
我が国からの基盤種が多く侵入している北米西海岸のアマモ場生態系を対象に現地調査を行い、移入先での在来種との機能の違いや、移入元と移入先での環境の違いによる生態系機能の変異について、我が国で得られたデータと比較・統合解析することで、環太平洋全域を対象としたアマモ場生態系機能・サービスのマクロスケールでの変異、および局所的な環境変動や移入種等の要因による変異を解明することを目的としている。本年度はワシントン州およびカリフォルニア州北部を対象に現地協力者と共同調査を行った。まず、カリフォルニア北部では周囲にも移入種が全く侵入していないBodega Bay内に調査海域を選定した。次にワシントン州では日本からの主要移入種であるマガキ・アサリ・コアマモ・ガラモ類が多くの海域に侵入し現地で漁業対象となっていたことから、その漁業活動の中心であるWillapa Bay内に調査海域を選定した。次に両海域において、天然アマモ群落、移入種を含むアマモ群落を対象にアマモの形質・群落密度測定、小型無脊椎動物群集および魚類群集の採集を行った。これらのサンプルをデータ化し、海域内での動物の群集構造について比較解析を行った結果、Willapa Bayでは移入種がいる地点において、移入種がいない地点より小型無脊椎動物類および魚類ともに種数・現存量が多く、その傾向は移入種がいる潮間帯付近だけでなく潮下帯にも波及していることが明らかになった。しかしながら、海域間での移入種のいない地点の比較解析ではBodega Bayで圧倒的に種数・現存量ともに大きく、移入種の影響はスケールによって異なるという当初の仮説を支持する結果が得られた。ただし、両海域で分類群が大きく異なっていたことから、異なる種プール間の比較を行っている可能性も示唆された。次年度以降は他海域のデータを加え、種プールの違いを補正した具体的解析を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
現地の都合により、本年度に予定していたカリフォルニア南部における現地調査が行えなかったが、その一方で次年度に予定していたワシントン州において現地調査を行うことができたため、進捗に遅れは出ていない。カリフォルニア北部において、コントロールデータとなる移入種が全く侵入していない海域での現地調査データを先んじて収集できたため、今後の移入種が侵入している海域データとの比較解析が容易となった。
現地調査地での調査許可や海外協力者との日程調整の都合により、年度別の調査海域の順番に変更が生じたが、研究内容および最終成果に全く支障は生じない。今後も計画申請に沿って調査・研究を進める予定である。
海外協力者との日程調整の都合により、本年度に計画していたカリフォルニア南部での調査を次年度に行うこととなった。そのため、その分の旅費・調査費用に充当する予定であった助成金を次年度に繰越して使用する予定である。
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