研究課題/領域番号 |
24405016
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
多田内 修 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任教授 (10150509)
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研究分担者 |
宮永 龍一 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (40335550)
紙谷 聡志 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80274520)
村尾 竜起 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (40626545)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中央アジア / キルギスタン / 砂漠化防止 / 送粉 / ハナバチ / 分類 / 生態系サービス |
研究概要 |
中央アジア乾燥地・半砂漠化地域の植物の送粉昆虫調査を目的として、主としてキルギスタンの中北部を中心に2回の調査を行った。第1回目は5月3日~5月29日、第2回目は8月23日~9月3日(代表者の多田内は8月26日~9月2日)で、参加者は、ともに代表者及び分担者2名の計3名である。第1回目はカザフスタンのアルマテイに入ったのち、陸路でキルギスタンのビシケクに着き、車を借り上げて、20日間キルギスタン国内を調査した。琵琶湖の9倍あるイシククル湖の一周調査のほか、カザフスタン国境付近、天山山脈を超え中部のナルイン周辺、ビシケク近郊の国立公園(アルアルチャ、コイタッシュ、イシクアタ)等で生態調査を行い、約3500個体のハナバチ類を採集することができた。また、第2回目は、調査出発前にビシケクにあるキルギスタン国立アグラリアン大学のOrozumbekov教授を訪問しハナバチ類の研究協力について懇談した。調査は、ビシケク近郊の国立公園2カ所、イシククル湖北岸の国立公園2カ所、中部のナルイン周辺で調査し、約1500個体のハナバチ類の採集と生態調査を行った。5月の調査に比べ採集個体数は少なかったが、これまであまりとれていない種が多く、今後の研究により新種が出てくる可能性が高い。ともに現地で昆虫針をさして持ち帰り、ラベルを付け標本作製を完了させ、分類同定作業を開始している。得られた標本については、標本データベースをインターネット上に公開した(BCAsia: http://konchudb.agr.agr.kyushu-u.ac.jp/beecasia/ index-j.html)。本調査による中央アジア・ハナバチ類コレクションは世界的にもよく知られるようになり、今年度カナダ、アメリカ、イギリス、イスラエルから研究用標本借用の照会があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の調査では、既に調査を終えたカザフスタンだけでなく、キルギスタンについてもハナバチ相の概要を得ることができた。キルギスタンでのハナバチ類の発生最盛期をほぼ確認できたので、26年度は採集調査だけでなく、営巣生態と送粉植物相の調査が進展できると確信している。また、本調査によって得られた標本に基づく中央アジア産ハナバチ類標本データベース(BeeCAsia) を公開し、さらに中央アジア産標本を含むアジア産ハナバチ類DNAバーコードデータベース(ABeeBOL: http://konchudb.agr.agr.kyushu-u.ac.jp/abeebol/index-j.html) の公開も開始した。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査での営巣生態と送粉植物相の調査を進めること、それに基づき半砂漠化植物に送粉する有用昆虫群を明らかにし保全対策を提言する。また、すでに公開している2つのデータベース(BeeCAsia, ABeeBOL) の他に、中央アジア産ハナバチ類画像データベースの構築を計画している。これにより、これまで未開拓であった中央アジアのハナバチ相の情報を広くインターネット上に公開し、半砂漠化植物の生態系サービスにかかわる情報を広めることが可能になる。
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次年度の研究費の使用計画 |
夏季の第2回目のキルギスタン調査を3週間予定していたが、研究代表者が大英自然史博物館に出張せざるを得なくなり、調査期間を短縮した。そのため次年度の調査用に確保した。 26年度は、6月および8月にキルギスタン調査を3週間計画している。また、中央アジア産標本の蓄積のあるロシア科学院動物学研究所(サンクトペテルブルク)およびオーストリア・リンツ自然史博物館等を訪問し、本調査で得られた標本の比較研究と中央アジア産ハナバチ類画像データベース構築のための画像撮影を行う予定であり、全額使用する計画である。
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