研究課題/領域番号 |
24405021
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
坂上 潤一 鹿児島大学, 農学部, 教授 (70399369)
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研究分担者 |
江原 宏 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10232969)
犬飼 義明 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20377790)
國分 牧衛 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40323084)
八田 珠郎 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (60164860)
中園 幹生 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70282697)
許 東河 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (90425546)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 稲 / 大豆 / 酸性硫酸塩土壌 / 鉄過剰症 / 冠水耐性 / 塩抵抗性 / 再生二期作 / 多回移植 |
研究実績の概要 |
1.硫酸塩鉱物の特定:異なる生育状況を示す土壌試料を用いて、蛍光X線分析による化学組成等元素の偏在性等のキャラクタリゼーションを行った。その結果、イネの枯死の原因は低pHのためであり、低pHは硫酸イオンの生成に起因していた。また、黄鉄鉱は土壌中には存在が確認できず、ジャロサイト(KFe3[SO4]2[OH]6)も同定されなかった。以上のことから、本地域の土壌には複数の硫酸塩鉱物が存在していると考えられた。 2.耐塩性大豆育種:インドネシアダイズ遺伝資源51系統の幼苗期の耐湿性を温室で評価した。その結果、インドネシア由来のダイズ遺伝資源が高い耐塩性を持つことが分かった。また、栽培ダイズ品種Jacksonと野生ダイズ系統JWS156-1間の交雑集団(BC3F4世代)122系統を獲得した。さらに、耐塩性に関する準同質遺伝子系統については、塩濃度に関わらず、耐塩性系統の葉の塩素濃度は低いことが明らかになった。 3.鉄過剰耐性稲育種:CiherangとDadahupの間で多型が検出可能なSSRマーカーを、既存のDNAマーカーから選抜した。さらに、Mi-Seqによって得られたDNAのシークエンスデータからSSRマーカーの作成を行った。その結果、各染色体上に均等に設計されたSSRマーカーは合計124個となった。これらのSSRマーカーを用いてCiherangとDadahupのF2集団のブロンジングスコアのQTL解析を行った結果、1番および11番染色体にQTL候補領域を検出した。 4.稲安定生産技術の開発:再生二期作栽培の効果的な施肥技術を確立するために、本作収穫時の施肥が刈り取り後の新茎の発生に及ぼす影響を比較検討した。施肥によってSPAD値と葉面積が増加し、その結果地上部の乾物重が増大した。一方で、スリウィジャヤ大学において、窒素施肥法を比較した結果、IR64ではN-leaf処理とN-root処理で、CiherangではN-leaf処理で無窒素処理に比べてRGRが高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地の作物生産において問題となる酸性硫酸塩土壌の障害のメカニズムの一部が明らかになった。稲育種においては、鉄過剰耐性系統が育成され、大豆育種においても、インドネシア遺伝資源の評価を行い有望系統を選抜できた。さらに大豆の耐塩性のメカニズムの一部についても明らかになった。稲栽培においては、水稲再生二期作の高ポテンシャル品種を選定するとともに、冠水障害を回避する施肥技術の開発に向けた知見を得た。 以上のように、それぞれの研究課題において、新しい知見を見出すなど、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、現地の共同研究機関とより密接に連携しながら下記の研究を推進する。 1.イネ育種と稲作技術開発:CiherangとDadahupのQTL解析で得られたQTL候補領域について、LOD値のピークの近傍に新たにマーカーを作成し、QTL領域を狭めていく予定である。また、BC1F2系統の中から2つのQTL候補領域がDadahupホモ型あるいは、どちらか一方がDadahupホモ型である系統を選抜する。CiherangとDadahup、Deng Pao Zhai、Tupa 729、Milyang 23の多型が検出可能なSSRマーカーを探索する。CiherangとDeng Pao ZhaiおよびMilyang 23のF2を得るとともに、得られたF2種子を用いて鉄過剰耐性に関するQTL解析を行い、新たなQTL候補領域の同定を進める。水稲再生二期作栽培については、異なるサイトの品種比較試験について、遺伝子型と環境型の交互作用について解析を行い、品種の一般適応性とコメ生産制限要因を明らかにする。また、再生茎の成長と光合成速度の関係を明らかにし、再生茎成育の向上の要因を示す。一方で、過去3年間の実験結果を基に、圃場条件へ適用すべき処理条件を明確にするための補完実験を実施する。 2.大豆育種:ダイズ耐塩性の準同質遺伝子系統あるいはすでに選抜したインドネシアの耐塩性ダイズ遺伝資源系統を現地の塩害圃場で栽培し、現地の塩害がダイズ生産への影響実態および耐塩性遺伝子の効果を明らかにするとともに、得たインドネシア耐性遺伝子資源の耐塩性とqNaCl3遺伝子の関係を究明し、雑種分離集団を作成し、新たな耐塩性遺伝子(座)の同定を目指す。さらに、塩イオンの地下部から地上部への移行を制御するメカニズム、根粒形成能と塩イオン移行との関連性および耐塩性と吸水能に関連した生理機能の解明を目指す。 3.酸性硫酸塩土壌の発生要因の解明:現地圃場に局在している複数の硫酸塩鉱物について、その発生メカニズムを鉱物学的な視点から明らかにするとともに、その対応策について検討をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
第8回アジア作物学会議(2015年9月)での研究発表のためスリウィジャヤ大学およびボゴール農大の教員2名を招へいする予定であったが、都合がつかず不参加となったために、係る経費(会議登録費、飛行機チケット、宿泊等)の支出が不要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
現地での成果報告会をおこなうため、参加分担者の出張旅費等に充てる。
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