研究課題/領域番号 |
24405022
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
星野 洋一郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (50301875)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遺伝資源 / 系統分化 / 遺伝的多様性 / 分子マーカー / ハスカップ |
研究概要 |
ハスカップはベリー類として貴重な遺伝資源の一つであるが、世界的にその全体像は把握されておらず、環境変動下でその野生遺伝資源が失われつつあるのが現状である。野生種のハスカップは北半球の温帯から亜寒帯に分布し、倍数性の変異があることが知られている。本研究では、分子マーカーを用いた系統分類を行い、各地域のハスカップの類縁関係と多様性について解析し、遺伝資源の保全と育種素材としての利用のためのデータを蓄積して公開することを目的としている。 中国では、黒竜江省の伊春および勃利等でサンプリングを行った。国内のハスカップについては、現在までの自生地調査で得られたコレクションを利用し、北海道全域と栃木県日光のサンプルを実験に用いた。 以上のサンプルについて、フローサイトメーターで倍数性の検定を行った。その結果、国内のハスカップのほとんどが4倍体であったのに対し、中国東北部に自生していたものはすべて2倍体であった。また、日本における2倍体間のDNA含量の幅は2.36%であるのに対し、中国で得られたサンプルでは7.02%から8.66%と、高い変異幅を示すことがわかった。中国のハスカップがより多くのDNA含量の変異を有することが明らかとなった。 次に、日本および中国におけるハスカップの類縁関係を調査するため、AFLP法による多型解析を行った。150系統以上のサンプルについて、450以上のAFLP多型について近隣結合法等による系統解析を行った。その結果、中国と日本の由来を別とするハスカップサンプルの2つのクラスター、そしてさらに細かい地域のクラスターというように、概ね地理的距離を反映した結果を示した。一方、日本の栃木県由来系統の中に北海道よりも中国の系統に近いものが存在することを示す結果が得られるなど、ハスカップの分布と伝播を考察する上で興味深い知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハスカップにおけるAFLP法による系統分類の手法をほぼ確立し、各自生地間の比較が可能となった。日本と中国のハスカップの比較を集中的に行い、倍数性、DNA含量に関する知見を蓄積することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究に用いるハスカップの供試材料をユーラシア全域に広げる。ロシアのバビロフ研究所の協力によりロシア全域のハスカップサンプルを利用する予定である。また、日本の博物館、植物園に収蔵されている標本サンプルを確認し、その利用の可能性を探ることを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、秋に計画していたロシア渡航の計画が遅れ、バビロフ研究所でのハスカップサンプリングが落葉のためできなくなってしまったために渡航を取りやめたことが主因である。 2014年3月にロシア・サンクトペテルブルクのバビロフ研究所を訪問し、2014年度の研究計画について入念な打ち合わせを進めてきた。2014年度は、ハスカップの葉のサンプリングに適した時期に渡航し、DNA用サンプルを採取する計画である。また、政情不安も予想されるため、サンプル送付等の段取りについても随時打ち合わせ、効率的な研究推進を図りたいと考えている。これらに係る経費について、本予算から支出する計画である。
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