• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実績報告書

ユーラシア・北米のハスカップ野生遺伝資源の多様性解析と評価に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24405022
研究機関北海道大学

研究代表者

星野 洋一郎  北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (50301875)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2017-03-31
キーワード遺伝資源 / 系統解析
研究実績の概要

ハスカップは日本では北海道を中心に分布し、本州の高山にも一部分布している。日本では北海道特産のベリー(小果樹)として栽培されているが、遺伝資源としての評価は途上にある。本研究では、日本とユーラシア地域のハスカップを対象に、分子マーカーによる系統解析、フローサイトメトリーによるDNA含量の差違について研究を進めた。
ピーマンを内部標準にしたフローサイトメトリーによる相対DNA含量の比較では、2倍体の最小値を示すLonicera boczkarnikovaeと最大値を示すL. edulisに有意な差違があった。同様に、4倍体の最小値を示すL. altaicaと最大値を示すL. emphyllocalyxが明らかとなった。これらの種は、DNA含量により識別可能であることが示唆された。
また、AFLP法による系統解析を行うために、ベリー類の一つであるキイチゴをトレーニング集団としてAFLP法の手法開発を行った。制限酵素とプライマーのセットを至適化し、AFLPマーカーによって種を識別できることが分かった。AFLP法をハスカップに応用し、前年度よりもサンプル数を増やして系統解析を進めた。NJ法によって系統樹を作成したところ、9つのクラスターに分かれた。ロシア由来の8種と中国由来のA. altaicaは二つのクラスターに内包され、これらは近縁であることが推測された。日本と中国の野生種は6つのクラスターに分散し、その関係性を明瞭に推定することは難しかった。
倍数性の影響を受けない葉緑体DNAの解析の結果、26塩基を一単位とする反復配列を見出すことができた。反復の回数により、ハプロタイプI~IVに分類し、各地域のハスカップを解析した。ハプロタイプIIが最も広範に分布しており、北海道のハスカップもほとんどがハプロタイプIIだった。本州と北海道のハスカップはハプロタイプが異なることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究でハスカップに倍数性変異があることを見出し、二倍体から五倍体の変異があることが分かった。AFLP法による系統解析の際に、この倍数性の影響をどのように処理をするかが難しい課題として残っていた。そこで、倍数性の影響を受けない細胞質ゲノムに着目し、葉緑体ゲノムを解析したところ、26塩基を一単位とする反復配列による多型を見出すことができ、その結果、これまで不明瞭だった母系を中心として系統関係を倍数性の影響を受けずに可視化することができた。この手法を適用することで、ユーラシアのハスカップの系統関係の全容を明らかにできることが期待される。
一方、計画していたロシアへの渡航(植物調査)がレベル1の渡航注意の状態のため中止を余儀なくされている。このため、予定していたロシア域のハスカップの調査が進められない状況にある。海外の共同研究者へのサンプル送付依頼を行うなどの方法でサンプルの調達を進めており、研究期間を延長することにより当初目標としていたユーラシアのハスカップの系統関係を明らかにしたいと考えている。

今後の研究の推進方策

ロシアの共同研究者にサンプルの分譲依頼をしており、サンプル入手後、直ちに系統解析を進める予定である。これまでに本研究で見出した葉緑体ゲノム中の26塩基の反復配列の解析を優先的に行い、ユーラシアおよび日本におけるハスカップの遺伝的多様性と系統関係の全体像を明らかにしたいと考えている。加えて、北海道では東部の一部に自生するハスカップの二倍体集団を対象にして、AFLP法の適用可能性を検証する。GPS情報をもとにした自生地の個体間の距離とAFLPによる系統樹の相関を検証し、遺伝的距離と地理的分布の関係性を整理する予定である。
最後にこれまでの研究成果を統合し、ハスカップの系統地理学的情報をもとに遺伝資源の評価を行う基盤整備を進め、成果発表を行う計画である。

次年度使用額が生じた理由

計画していたロシアへの渡航が外務省の危険情報レベル1の渡航注意の状態のため中止となり、予定していたロシア域のハスカップの調査が進められない状況にある。このため、ロシアのハスカップの研究材料が入手できず、解析が進められない事態となっている。以上の事由により研究計画の変更を余儀なくされており、上述の研究に係る経費分が次年度使用額として生じた。

次年度使用額の使用計画

ロシアの共同研究者(サンクトペテルブルグ・バビロフ研究所)にハスカップのサンプル送付依頼を行っている。このサンプルを入手後、追加の実験、研究成果の発表に係る費用として助成金を使用する予定である。
また、外務省の危険情報を確認し、可能であればロシア・サンクトペテルブルグのバビロフ研究所を訪問し、植物調査、情報交換等、共同研究の推進を行いたいと考えている。このための渡航費として経費を支出予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [国際共同研究] バビロフ研究所(ロシア連邦)

    • 国名
      ロシア連邦
    • 外国機関名
      バビロフ研究所
  • [雑誌論文] Assessment of genetic relationships among cultivated and wild Rubus accessions using AFLP markers2015

    • 著者名/発表者名
      Miyashita T., Kunitake H., Yotsukura N., Hoshino Y.
    • 雑誌名

      Scientia Horticulturae

      巻: 193 ページ: 165-173

    • DOI

      10.1016/j.scienta.2015.07.004

    • 査読あり / 謝辞記載あり

URL: 

公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-01-31  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi