研究課題
平成25年度は、平成24年度に調査したイチョウ自生地の一つとされる天目山に加えて、同じく自生地とされる金仏山周辺を調査したが、土砂崩れのために自生地の確認と遺伝子解析用の葉の採取はできなかった。また、韓国のイチョウ大木の調査については、平成24年度の西北部から西南部の9個体に加えて、平成25年度は北東部から東南部に分布する7個体について生育実態調査と葉の採取を行った。日本国内のイチョウ大木については、平成25年度に九州・四国・中国地方の大木68個体・101サンプル(幹が複数ある個体は同一個体か判断できないため幹ごとに葉を採取。以下同様)、関東から東北北部の大木97個体・163サンプルの生育実態調査・葉の採取を行い、遺伝子を抽出した。現在、中国・韓国・日本の大木の生育実態調査データをもとに仏教寺院や聖堂等の生育地や植栽方法、形状について類型化し関連性を解析中である。また、遺伝子データをもとに統計解析し、類縁関係を解析しているところである。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、中国から直接、あるいは韓国経由で日本に導入された中国起源有用樹木が、中国国内・韓国・日本においてどのように分布拡大し、あるいは伝搬してきたか、その拡大・伝搬経路を遺伝子解析によって解明するとともに、拡大・伝搬の文化的背景を造園学・文化史学・古生物学・考古学・生物学の観点から学際的に解明するものである。具体的には、中国はもとより、韓国、日本の各地に樹齢数百年と推定される巨樹が分布するイチョウを中心に、トウジュロやラカンマキなど、弥生時代以降、江戸時代までに伝搬導入された木本を対象に、これら伝搬の宗教的・文化的・生物学的背景を探るものである。平成24年度は、イチョウの自生地とされる天目山周辺の現地調査と遺伝子解析用葉の採取、韓国西側のイチョウ大木の現地調査と葉の採取を行った。平成25年度は、中国のもう一つの自生地とされる金仏山周辺の現地調査を試みたが、土砂崩れのため果たせなかった。韓国については韓国東側のイチョウ大木の現地調査・葉の採取を行うことができた。また、日本国内では九州・四国・中国地方、および関東北部から東北地方北部のイチョウ大木の現地調査と葉の採取を行うと同時に、これまでの採取葉からの遺伝子抽出を行った。現在、これまでのイチョウ大木の生育実態調査データをもとに仏教寺院や聖堂等の生育地や植栽方法、形状について類型化し関連性を解析中であり、また遺伝子データをもとに統計解析し、類縁関係を解析しているところである。対象地域が中国から韓国、日本と広範囲に及び、また中国国内の交通事情や大木情報の精度の低さからその調査に時間を要しているが、中国・韓国・日本のイチョウ大木の生育実態、遺伝子的類縁関係の全体像が把握できつつある。
平成26年度は、過去2年間の調査・分析結果を踏まえながら、平成25年度に果たせなかった中国国内のイチョウ自生地の一つとされる金仏山周辺の調査と、中国国内の大木の生育実態調査・葉の採取を行う。また、韓国国内についてはこれまで調査・分析対象とした国家指定天然記念物以外のイチョウ大木を加えて調査する。さらに、日本国内については類縁関係を探る上で調査個体が少ない地域を重点的に調査する。これらのイチョウ大木の調査と合わせて、現地調査対象地周辺に生育するラカンマキやトウジュロなどの中国起源樹木の生育実態・葉の採取も合わせて行う。
平成25年度の支出は、イチョウ大木の現地調査と遺伝子解析用の葉の採取のための旅費と、遺伝子解析用薬品やキットがほとんどであり、残額は遺伝子解析用薬品やキット購入のための予算として年度末まで確保していたが、既購入分で対応できたため、残額として残った。平成26年度は、平成25年度の遺伝子解析結果を踏まえて、さらにイチョウ大木の現地調査と遺伝子解析を進める必要があり、その費用として使用する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)
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