研究課題/領域番号 |
24405026
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
大島 一里 佐賀大学, 農学部, 教授 (00176869)
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研究分担者 |
佐野 輝男 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (30142699)
竹下 稔 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00304767)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インド / 台湾 / 植物ウイルス / ウイロイド / カブモザイクウイルス / 伝搬ルート / 国際情報交換 |
研究概要 |
南部インドルートであるヨーロッパとアジアの貿易・文化の交差点である中東のトルコからインド経由で日本を含む東アジアに繋がるルートに発生するウイルス(TuMV,CMVやCaMVなど)とウイロイドついて,さらに北部シルクロードルートであるトルコやウクライナなどから新疆・ウイグル自治区の中国北西部から日本を含む東アジアに繋がるルートに発生するウイルスとウイロイドついて,野菜類や果樹類について調査をすることを本研究の目的としている。 これまで既に,野菜類であるアブラナ科植物に感染するTuMVについては,南部インドルートの一部である中国南部から中央部にかけて採集してきており,ゲノム構造解析が進んでいるが,25年度は大島,佐野と竹下がインドを訪問し,インドの研究協力者としてCharith Adkar博士とウイロイドに精通している李世訪教授(中国農業科学院)にご協力いただき,TuMVの他にCMVやCaMV様症状さらにはウイロイド様症状を示す植物について調査・採集を行った。現在ゲノム構造を解析中である。 さらに東アジアの一部である日本にどうやって侵入してきたのか,南部インドルートに関連する台湾について,大島,佐野と竹下が,3月に主にアブラナ科植物についてTuMVの他にCMVやCaMV様症状を示す植物やウイロイド様症状を示す植物について調査・採集を行った。多くの植物がTuMVに感染していたことが明らかとなった。現在ゲノム構造を解析中であるが,一部のウイルス・ウイロイドについては生物学的性質を調べている。なおミャンマーでの調査を3月に予定していたが,この時期アブラナ科植物の栽培が少なくウイルスを見つけにくいことが判明したことから,3月の採集地を台湾とし,ミャンマーでの採集は26年度の秋から冬に行うことにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度においては,アブラナ科植物のウイルスの起点として考えているトルコの調査,さらに南部インドルートの一部である中国雲南省について,ウイルス・ウイロイドの調査を遂行できた。 25年度においては,南部インドルートの一部であるインドの南部と北部,また特に東アジアである日本にどうやって侵入してきたのかを探れる南部インドルートの一部であると思われた台湾についても,ウイルス調査ができた。ミャンマーでの3月はウイルス・ウイロイドを見つけにくいということで,調査を延長したが,その代わりに台湾での調査が可能となり,多くのウイルスを見つけることができた。ミャンマーについては,26年度の秋から冬にかけて調査することを予定している。 目的としたウイルス・ウイロイドの調査が遂行でき,またゲノム解析も順調に進展しているため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究者と協力し,海外学術調査を推進する。なお海外の採集地については,ゲノム解析研究の進展を考慮しながら選定したい。 北部ルートとしては,ヨーロッパを起点として,ウクライナ・中国新疆自治区,中国中央部の蘭州や西安など,そして北京から東北部の吉林省などが考えられ,それらの中の一或いは二地方を訪問候補地として考えている。現在の訪問国候補地として考えているのは,中国中央部,そして大陸の沿岸部である。基礎情報を収集し,分析評価したい。 南部ルートの探索については,ヨーロッパとアジアの貿易の交差点として知られる地中海沿岸地方に位置するトルコ(小アジア)を起点として,イラン,パキスタンから繋がるインド,ミャンマー,ブータン,タイそして中国南部の雲南省,湖南省そして中国沿岸部,台湾そして日本にたどり着く南部インドルートの一或いは二地方をにおいてウイルス・ウイロイド病を調査し,我が国を含む東アジア地方にどのようなルートで,伝播したのか基礎情報を収集し,分子進化を分析評価したい。訪問国候補地の一つとしては,ミャンマーであり,ミャンマーで栽培されている様々な作物,野生種や果樹類を対象として,ウイルスとウイロイドの探索を行う。 またそれらの国と日本国内でのウイルスの比較をするために,国内でも調査・採集が必要となる。 得られた結果を基にして,採集した病原体のゲノムの塩基配列を決定後,バイオインフォマティクスを用いて集団遺伝学的に解析し,ユーラシア大陸での広範な伝播ルートの基礎情報収集と分析評価を行う。最終的に,病原体がどのように多様化し,分布域を拡大させてきたかを実証的に解明し,得られた結果を取りまとめ学会発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
3月に訪問を予定としていたミャンマーで,特にウイルス感染アブラナ科植物の採集が困難となったために,訪問先を日本近隣の台湾に変更したため,旅費が安価となった。 本研究に関わるウイルス・ウイロイドを調査・採集するために,ウクライナ・中国新疆自治区,中国中央部の蘭州や西安など,そして北京から東北部の吉林省などへの北部ルートへの訪問,トルコ(小アジア)を起点として,イラン,パキスタンから繋がるインド,ミャンマー,ブータン,タイそして中国南部の雲南省,湖南省そして中国沿岸部,台湾そして日本にたどり着く南部ルートなどへの訪問に使用する。またそれらの国と日本国内でのウイルスの比較をするために,国内での採集にも使用する。
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