研究課題
基盤研究(B)
1.北アフリカにおけるサバクトビバッタの相変異制御因子の解明と発生予察技術の確立2012年度は、1月に約2週間、中村がモーリタニアへ渡航し、現地で研究協力者の前野・Babahと合流して調査を実施した。その調査地で飛蝗(群生相成虫の集団飛翔)に遭遇し、この飛翔集団より個体を採集して形態をしらべたところ、群生相にまじって約10%の孤独相成虫がふくまれていることがわかった。群生相集団に孤独相が少数まじっているという報告はこれまでにもあったが、今回観察された孤独相個体の比率は過去の知見から予想されたものよりも高く、多くの成虫が羽化後も孤独相のままで群生相集団と行動をともにしていることが示唆された。また、飛翔集団から採集したメス成虫を半野外におかれたケージ内で集団飼育したところ、性成熟の度あいによって産卵する卵のサイズが変化することを確認した。これは、野外で採集された卵のサイズから個体群密度を推定する方法を確立するうえで重要な知見である。2.西アフリカにおけるマメノメイガの環境保全型管理技術の開発2012年度は、8月に2週間、足達・小路がナイジェリアとベナンへ渡航し、現地で研究協力者Tamoの支援のもと調査を実施した。ベナンに3か所、ナイジェリアに2か所の調査地を設置し、ライトトラップやフェロモントラップによりマメノメイガ個体数密度について定点観測をおこなった。えられた結果を過去のデータとあわせると、本種が西アフリカ南部の湿潤サバンナ地帯で周年的に発生し、降雨と作物の栽培時期にあわせて北部の乾燥サバンナ地帯へと移動していることが明確にしめされた。また、乾燥サバンナ地帯に飛来する個体群では,飛来時期の前半には性比が雌にかたより、雌の交尾個体率が高い傾向があることが、あらためて確認された。各調査地でえられた気象観測データをもとに、気象要因と本種の個体群特性との関連を分析中である。
2: おおむね順調に進展している
本年度「研究の目的」とした、北アフリカにおけるサバクトビバッタと西アフリカにおけるマメノメイカの繁殖行動や発生生態と長距離移動との関係を解明するため、各調査地に野外ケージやトラップ、気象観測装置を設置するなど、現地調査体制を確立した。現地研究者協力者との協力体制も順調であり、本年度の研究はほぼ計直どおりに実施することができた。
おおむね当初の計画どおりに研究をすすめる。2013年度は11~12月に中村が約2週間、8月に足達・小路が約2週間、それぞれ北アフリカと西アフリカへ渡航する。北アフリカにおいては、現地研究協力者の前野・Babahと合流し、サバクトビバッタの簡便な密度推定法と相変異指標を開発するため、野外ケージをもちいて、ひきつづきサバクトビバッタの卵サイズと個体群密度および相変異傾向との関係を調査する。また、発生予察用ライトトラップ開発するため、ことなる密度で飼育した孤独相成虫にライトを照射し、その反応を比較する。西アフリカにおいては、現地研究協力者のTam6と合流し、2012年度に探索した代替寄主植物とササゲを餌にもちいてマメノメイガを飼育することにより、本種の繁殖行動におよぼす寄主植物の影響をあきらかにする。また、乾燥サバンナ地帯の各調査地でライトトラップおよびフェロモントラップへの捕獲状況調査を、気象観測とともに継続する。
2012年度に北アフリカで計画していたサバクトビバッタの夜間発生予察用ライトトラップの開発は、治安上の理由から実施できず、このため渡航回数と滞在期間を縮小した。2013年度は治安状況の改善が見こまれるため、前年度よりくりこした研究費を当該年度分とあわせ、前年度研究計画をあらためて実施する。
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