研究課題/領域番号 |
24405027
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
足達 太郎 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (50385506)
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研究分担者 |
小路 晋作 金沢大学, 地域連携推進センター, 博士研究員 (10447683)
中村 逹 独立行政法人国際農林水産業研究センター, 生産環境・畜産領域, 主任研究員 (40373229)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / モーリタニア:ナイジェリア:ベナン / サバクトビバッタ / マメノメイガ / 長距離移動 / 相変異 / 性成熟 / 気象要因 |
研究概要 |
1.北アフリカにおけるサバクトビバッタの相変異制御因子の解明と発生予察技術の確立 11月に中村がモーリタニアに渡航し、現地研究協力者の前野・Babahと合流して調査を実施した。サバクトビバッタの個体群密度と卵サイズの関係について、群生相のメス成虫は孤独相よりも大きな卵を産み、これから孵化した幼虫は大型で飢餓耐性が高くなることがあきらかとなった。また、ひとつの卵塊から孵化した幼虫の体サイズは、群生相ではより変異に富み、同程度のサイズの孤独相幼虫にくらべて飢餓耐性が高いことがわかった。これらのことから、群生相のメスは餌不足など劣悪な環境下であっても、生存率の高い幼虫を産むことで適応度を高めている可能性が示唆された。また、野外でマーチングをおこなう群生相幼虫について、モニタリング技術確立のために重要となるライトトラップへの誘引性をしらべたところ、室内飼育個体群と同様、光に誘引されないことがわかった。 2.西アフリカにおけるマメノメイガの環境保全型管理技術の開発 8月に足達・小路がベナンとナイジェリアへ渡航し、現地研究協力者Tamoの支援をえて、5つの調査地でライトトラップとフェロモントラップによるマメノメイガの個体数調査をおこなった。えられた結果を過去のデータと比較すると、本種が毎年、熱帯内収束帯の北進にあわせて長距離移動をおこなうことが、あらためて示唆された。一方、過去の研究では、北緯9度以北ではオスがフェロモントラップに誘引されないことがしめされたが、本年度の調査で、北緯9度15分に位置する調査地において多数の成虫がフェロモントラップに誘殺される事例がみられた。この調査地は広大な森林に隣接しており、野生寄主植物の存在が本種の繁殖活性に影響をおよぼしている可能性が示唆された。各調査地でえられた気象観測データをもとに、気象要因と本種の個体群特性との関連についても解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北アフリカにおいては、治安上の問題により、予定していた渡航計画を一部中止したものの、個体群密度と卵サイズ、飢餓耐性との関係から、サバクトビバッタの繁殖と発育にかかわる生理・生態学的特性の一部をあきらかにすることができた。また群生相幼虫の光に対する反応をあきらかにし、害虫管理に必要なモニタリング技術を確立するうえで重要な知見をえることができた。 西アフリカにおいては、当初計画していたマメノメイガの飼育実験をのぞいて、野外調査をほぼ計画どおりに実施できた。その結果、初年度から2年間の継続調査により、調査域におけるマメノメイガの季節消長パタンがあきらかにすることができた。また、性比や交尾個体率の解析も順調にすすんでおり、本種の繁殖と移動に影響をおよぼす諸因子を解明するためのデータが蓄積されてきた。 以上のことから、研究目的に対する達成度は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
北アフリカでは、サバクトビバッタの卵サイズと相変異傾向および餌植物との関係についてあきらかにする。また、交尾行動および産卵時のメス成虫の行動についてしらべ、これらの行動が相変異現象におよぼす影響を解明する。また、孤独相個体に対するライトトラップへの誘引効果をあきらかにする。さらに、最近提唱された「メスが産卵時に卵鞘につける匂い物質が集合フェロモンとなって他のメス個体を誘引し、群生相発現の引き金になる」という仮説について検証をおこなう。 西アフリカでは、定点調査地でのライトトラップおよびフェロモントラップへの捕獲状況調査および気象観測データにより、マメノメイガの長距離移動と繁殖に影響をおよぼす諸因子を解明する。本年度、フェロモントラップへの多数の捕獲がみられた調査地では、配偶行動におよぼす栽培ササゲ以外の寄主植物の影響について解明するため、調査地周辺の代替寄主植物の分布について調査をおこなう。 以上の調査および解析結果をもとに、3年間の研究成果をとりまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度中に2回予定していた北アフリカへの渡航計画のうち、1回を現地の治安状況の悪化により中止したため、渡航旅費および現地調査費として当初予定していた約70万円を次年度に繰越した。 また、西アフリカにおいて、現地研究機関に支はらっている委託調査費用のうち、調査が年度末にかかるものがあり、この費用約8万円の予算執行を次年度に繰越した。 次年度は、北アフリカの治安状況に改善が見こめるため、現地調査を予定どおり実施する。さらに、成虫産卵時の集合フェロモンによって相変異が誘起されるとする仮説について、仮説を提唱した研究者と討議するため、フランス国際協力農業開発研究センター(CIRAD)および国際昆虫生理生態学センター(ICIPE)への訪問を予定していることから、次年度への繰越金をフランスとケニアへの渡航費用に充当する計画である。 西アフリカでの委託調査については、本年度末にかかって予算執行を延期していた分を次年度に支出する計画である。
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