研究分担者 |
野村 周平 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (80228361)
小西 和彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 主任研究員 (90414747)
吉冨 博之 愛媛大学, ミュージアム, 准教授 (10542665)
上野 高敏 九州大学, 農学研究科, 准教授 (60294906)
吉松 慎一 独立行政法人農業環境技術研究所, 農業環境インベントリーセンター, 上席研究員 (10354127)
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研究概要 |
1)ベトナム北部,サバ(6月) サバを拠点として,チュンチャイ,タフィン,バンホーなどの主要な農村の農地を視察し,昆虫の調査を行った.圃場としては水稲が主たる作物で,その他トウモロコシなどを急斜面に栽培していた.殺虫剤の使用はほとんどないとのことだったが,周辺の二次林が極めて限られるため,生物相は比較的単調である.また,ベトナム最高峰のファンシーパンのふもとでも調査を行った.この調査では,全体を通じて約1万点の試料が得られ,現在標本作製と同定作業を行っている.カメムシ目コバンムシ科,チョウ目ヤガ科,コウチュウ目コガネムシ科,クワガタムシ科,クロツヤムシ科,ハチ目ヒメバチ科で分布や生態に関する新たな知見が得られたので,学術雑誌や学会で報告した. 2)ベトナム南部,ダラット~チューヤンシン国立公園(2月) 南部の高原野菜の生産地として有名なダラットから,チューヤンシン国立公園にかけて幹線道路沿いの集落で調査を行った.ダラットでは,アブラナ科,ネギ類,ウリ類を多く栽培しており,農薬の散布回数も非常に多いため昆虫相は極めて貧弱であったが,主要部を離れるとコーヒーのプランテーションが中心で,現在も火を入れて開墾を行っている.乾季であり,調査適期とはいえなかったが,小型甲虫類をはじめ2,000個体ほどの試料を得ることができた.そのうち,ゾウムシ類の多くは未記載種であると考えられる.また,ロンアン省の水田で寄生蜂類の調査を実施した.当地では極めて多量の殺虫剤を散布しているが,まれに防除が行き届いていない水田があり,そのような場所ではメイガ類やイネウンカ類が多発していた.イネウンカ類の寄生蜂の水田カマバチが100個体ほど得られた他,東南アジアでは数個体しか確認されていないカマバチ寄生性のトビコバチ類が数百個体得られた.これらの集団遺伝構造はイネウンカ類の移動性を反映するとされるが,ベトナム南部の状況は明らかでないため,現在解析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の調査の実施目標をおおむね達成し,圃場や周辺環境から豊富な研究試料を得ることができた.しかしながら,2月は調査地の乾季にあたるため,特に山間部の網羅的な調査には不向きであった.過去にこのような時期の多様性調査があまり行われていなかったことと,寄生蜂調査は計画を変更してメコンデルタ周辺の水田で行うなど的確な判断ができたため,結果的に調査成果は予想以上に得られた.
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度はベトナムで複数回の調査を行ったため,2013年度はラオスでの調査を実施する予定で,カウンターパートとの調整を進めている.また,異なる季節の昆虫相を把握するために,秋にも調査を実施する必要がある.また,得られた情報を元に多様性評価を行ってゆく.
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