研究課題/領域番号 |
24405028
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
岡島 秀治 東京農業大学, 農学部, 教授 (60194346)
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研究分担者 |
野村 周平 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, その他 (80228361)
小西 和彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (90414747)
吉冨 博之 愛媛大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10542665)
上野 高敏 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60294906)
吉松 慎一 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (10354127)
荒谷 邦雄 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (10263138)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 天敵 / 農業生態系 / 生物多様性 / 分類学 / 中立昆虫 |
研究概要 |
(1)ラオス 水田:ラオス北部の高標高地域は6月前後が苗代の育成期及び移植期にあたる.バンムアン村,バンドクマイ村で農家に聞き込みを行い,農薬使用の有無,主要な害虫の情報を得た.一部裕福な農家以外では殺虫剤を使用しておらず,セジロウンカの被害が顕著であった.水田周辺で水生昆虫や寄生蜂類を中心に試料を得た.ラオス水田の寄生蜂は過去にほぼ調べられておらず,貴重な試料になったといえる.また,サラサヤンマの仲間などトンボ目の未記載種も得られており,保全の観点からも当地の生物相調査の意義が高いと考えられる.森林:村落周辺の生活林,および材木の出荷で利用されている伐採林において,食植性昆虫,土壌性昆虫,それらの寄生蜂類を得た.マレーゼトラップや衝突版,ライト採集なども活用し,網羅的な試料収集を行った. (2)ベトナム 水田:ベトナム北部の水稲の収穫期(9月)などに調査を行った.ハノイ及びサパ近郊で水田の昆虫を網羅的に採集した.昨年度の調査でベトナム南部で得られたイネウンカの高次寄生者はほぼ未記載種であった.その対応関係を明らかにするため寄主を飼育し,成虫および高次寄生者を得た.イネウンカ類,メイチュウ類の寄生蜂が多数得られた.森林:ファンシパン山の山麓(標高1800m)でクワガタムシ科を中心とした食材性甲虫およびそれらの寄生蜂の調査を行った.調査地は20世紀に入るまで原生林的環境であったと考えられ,樹齢数百年はありそうな巨大なツバキの仲間の倒木が散見されるが,現存する株はもうみられない.そのような大木を好むクワガタムシ類のうち,インドシナ初記録となる分類群が本調査で見出された.クワガタムシ類の生物地理を考察するうえで極めて貴重な発見といえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象分類群ごとの調査適地や好適な環境が明らかになったため,昨年より効率的な調査が実施できたと考えられる.特に,ラオスではトンボ目やチョウ目,小型の甲虫目,アリガタバチ科をはじめとしたハチ目で合計すると数百種の未記載種・未記録種を得ることができた.だが,数万点におよぶ試料の仕分けや標本作製を中心に進めてきたため,成果物を活用した論文発表は逐次行っているものの,件数が十分伸びていない.最終年度は,現地での調査だけでなく,これまでに整理できた試料の活用も重要な課題となる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の今年度は,これまでに行っていない時期と地域に焦点を絞って現地調査を行う.すなわち,北ベトナムにおいて初夏に集中的な調査を行うとともに,晩夏から初秋にかけての南ベトナムに赴くことで,地理的・季節的に調査範囲を広げて新知見の蓄積を試みる.また,食材性甲虫とその寄生蜂の探索や果樹に関わる昆虫に目を向け,対象とする分類群の幅も広げる.これまでに蓄積された試料と今年度得られる成果物を合わせて論文の作成・発表を行いつつ,種および標本の情報を電子化し,一般公開へ向けたデータベースの構築を行う.そのうえで,本課題の全期間をとおして得られた結果から総合的に考察を行い,ベトナム・ラオスの農耕地における天敵・中立昆虫の多様性を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に使用しなかった消耗品があったため. 消耗品として使用する予定.
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