研究課題/領域番号 |
24405032
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
市榮 智明 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (80403872)
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研究分担者 |
陀安 一郎 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (80353449)
名波 哲 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70326247)
松岡 真如 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (50399325)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射性炭素 / 熱帯雨林 / 成長履歴 / 気候変動 / 炭素同位体比 / 東南アジア / フタバガキ科 / 断片化 |
研究概要 |
この研究は、地球規模の気候変動が東南アジア熱帯雨林樹木の成長に及ぼす影響を、材に含まれる放射性炭素14(14C)濃度から明らかにすることを目的としている。今年度は、(1)放射性炭素分析法を用い、異なる立地条件に分布する熱帯雨林樹木の過去50年の成長量変化、及び(2)異なる2箇所の熱帯雨林における過去50年の水利用効率の変化、について調査・分析を行った。主な研究成果を以下に示す。 (1)異なる立地条件に分布する熱帯雨林樹木の過去50年の成長量変化の違い マレーシア・サラワク州のランビル国立公園において、谷部と尾根部に特異的に分布するフタバガキ科樹種、合計4種15個体について、14C分析法を用いた1960年代以降の成長量解析を行った。その結果、1960年代以降の平均の成長速度は、樹種間で有意差が見られ、谷に分布する1種で成長速度が低かった。しかし、過去50年間の年代毎の成長速度は、種内で有意な差は見られなかった。つまり、調査した4樹種は、立地環境の違いに関係なく、気候変動の影響をあまり受けていないことが分かった。 (2)異なる2箇所の熱帯雨林における過去50年の水利用効率の変化 マレーシアのランビル国立公園、及びパソ森林保護区に生育する樹木について、それぞれ、材に含まれる炭素同位体比(δ13C)と大気中のCO2濃度の関係から、過去50年間の水利用効率の変化を調べた。その結果、パソの樹木の方が、ランビルの樹木に比べて過去50年間の水利用効率が増加する傾向にあった。過去の気象データから両調査地の蒸発散量の変化を求めたところ、パソでの蒸発散量の増加傾向が明瞭であり、近年より乾燥状態にあることが分かった。つまり、同じ東南アジアの熱帯雨林でも、場所によって長期的な気温や降水量の変化度合いは異なり、それが樹木の生理や成長量にも影響を与えている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクト2年目となる今年度は、初年度に確立した放射性炭素分析法を用いた熱帯雨林樹木の成長履歴解析法を応用し、熱帯雨林樹木の過去50年の成長量の変化を解析することができた。また、同じ熱帯雨林でも、気象条件の変化度合いが異なる地域が存在し、それが長期的な樹木の生理や成長量に反映されていることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本研究で確立した放射性炭素分析法を、東南アジア広域の熱帯雨林やその周辺の森林に生育する樹木に積極的に活用し、地球温暖化や森林の断片化、人為的攪乱が熱帯樹木の成長や種構成に与える影響を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
放射性炭素分析は、前処理を国内で行い、分析自体は分析会社に委託している。昨年度は、前処理の速度や分析会社の分析スケジュール等の問題から、予定していた通りの分析を行うことができなかったため、助成金を次年度に繰越した。 今年度に繰越した研究費を含め、今年度に分析委託を行って予算を使用する計画である。
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