研究課題
基盤研究(B)
本年度はマレー半島での大規模な一斉開花が起きなかったため、現地での生態調査は行わなかった。そのため過去の一斉開花時(200年と2005年)に収集した種子の分析を中心に行った。フタバガキ科のShorea maxwellianaの一斉開花での平均他殖率は91.8%(2002年)、86.1%(2005年)となり、他のフタバガキ科樹種と同じく他殖が優占していた。それに2002年と2005年の開花個体密度はそれぞれ1.925 tree/ha、2.675 tree/haと異なっていたが、他殖率はほとんど変わらなかった。また、本調査地のS.maxwellianaは2回の一斉開花を通して遺伝的に多様な花粉を開花個体間で交換していることが分かった(pollen richness=3-799~4.897(2002年)、3.241~4.586(2005年)。遺伝子多様度=0.596~0.712(2002年)、0.595~0.723(2005年)。また、2005年では近距離交配が多く、母樹間が遠いほど、各母樹が受け取る花粉プールの遺伝的組成は異なっていたが、2002年ではそのような関係はみられなかった。これらのことから、他種に比べてプロット内の成木数が多い本種は、一斉開花時の開花個体密度が変わっても高い他殖率を維持していることが分かった。また、2回の一斉開花を通して遺伝的に多様な花粉を交換しているが、同種の開花規模によって花粉流動パターンは異なっていることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
大規模な一斉開花が起きなかったので、以前の一斉開花の際に収集した母樹別の種子の分析を進めて予定通りの解析ができた。
一斉開花が起こったら、開花調査などを行い、母樹別の種子を収集する。また以前の一斉開花に収集した種子の分析も進めて、樹種ごとの遺伝子流動範囲を推定して、択伐のための遺伝的ガイドラインを作成する。
これまでに収集したフタバガキ科の母樹別の種子を分析して、遺伝子流動範囲の推定を行う。本年度に一斉開花が起これば、生態調査を行い母樹別の種子の収集を行う。
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Molecular Ecology
巻: 22 ページ: 2264-2279