研究概要 |
本研究の全体構想は,寒冷乾燥地の灌漑農地における水・土壌資源の保全に向けた定量的な評価を行い,地域資源管理・活用および環境修復のための工学的手法の導入オプションを提示することで,農業生産物の質・量ともに向上させる水・土利用体系の確立と農村社会の持続可能な成長戦略を構築することである。特に,本研究では,寒冷乾燥地の水不足と土壌・地下水の塩性化に関する基礎的な現地調査・実験を踏まえ,近年増加している地下水利用とその枯渇問題についても取り組むことを目的とした。そのために,(1)農業水利の実態把握と適切な管理方法,(2)地下水賦存量の把握と適正な地下水利用,(3)地域的な塩分収支の把握と塩性土壌改良対策,についての検討を行う必要がある。 そこで,初年度は,調査地を新疆ウイグル自治区・コルラ市として,6月に現地調査を実施し,地下水位観測用の水位計を設置した。8月には共同研究者とその後の調査に向けて打合せをおこなった。しかしながら,7月には水位計が撤去され,8月の現地調査の際には当該地区での調査の停止を地方行政機関より求められた。そのため,比較検討のため北新疆地区・阜康市の灌漑施設ならびに関係部署へのヒアリング調査を急遽実施した。その後,現地カウンターパートの新疆大学関係者と調整し,3月に同自治区・トルファン市を訪れ,重点調査地を再設定した。このときに撤収された水位計が返還されたため,現地への設置は次年度へと持ち越すことになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では,先行研究の研究成果を有効に活用するため,調査対象地を中国・新疆ウイグル自治区に設定している。しかし,H24年9月に調査に訪れたところ,中国側の地方行政機関によって全ての観測機器が回収されており,さらには当地での調査停止を指示された。そのため,当初予定していた重点調査地を変更する必要が生じ,新しい重点調査地の選定と関係機関との調整に時間を要してしまった。
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今後の研究の推進方策 |
従前と異なり,H24年度より調査実施において制限を受けることが多く,当初計画どおりの活動が難しい状況にある。中国側関係者から直接的な表現はされないものの,昨今の日中関係の悪化によって何らかの指示が出されているとみなされる。そのためこれまで以上に関係各署との調整をはかり調査を進める予定であるが,場合によってはフィールドを大きく変更する可能性がある。
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