研究課題/領域番号 |
24405039
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 忠男 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (00312398)
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研究分担者 |
清水 克之 鳥取大学, 農学部, 講師 (10414476)
久米 崇 愛媛大学, 農学部, 准教授 (80390714)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 乾燥地 / 水利用 / 塩類集積 / 土壌物理 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の全体構想は,寒冷乾燥地の灌漑農地における水・土壌資源の保全に向けた定量的な評価を行い,地域資源管理・活用および環境修復のための工学的手法の導入オプションを提示することで,農業生産物の質・量ともに向上させる水・土利用体系の確立と農村社会の持続可能な成長戦略を構築することである。特に,本研究では,寒冷乾燥地の水不足と土壌・地下水の塩性化に関する基礎的な現地調査・実験を踏まえ,近年増加している地下水利用とその枯渇問題についても取り組むことを目的とした。そのために,(1)農業水利の実態把握と適切な管理方法,(2)地下水賦存量の把握と適正な地下水利用,(3)地域的な塩分収支の把握と塩性土壌改良対策,に関する現地調査を新疆ウイグル自治区の重点調査地区(パランカレーズ村)で実施した。 地区の水管理,地下水利用について関係各署ならびに農民を対象に聞き取り調査を実施した。この地域では,灌漑用水をミヤゴウ河と地下水(カレーズとポンプ揚水)に依存しており,河川からの取水と配水管理は行政機関(水管站)が,地区レベルの配水管理については用水戸協会(参加型水管理)が担当し,地下水と河川水を混合して灌漑することが無いと確認された。 調査圃場において,土壌をサンプリングし,1:5抽出溶液のECとpHの測定,透水試験,pF試験,粒度分析をおこなった。その結果,用水路からの距離の違いによる除塩効率の違いが土壌塩分分の不均一性の要因であることが明らかとなった。さらにこの地区では極めて地下水位が低く,塩類集積は灌漑にともなう一時的な水分過多の状態が引き起こしているものと予測された。また,灌漑用水のナトリウム吸着比(SAR)とECを比較したところ,河川水による灌漑を継続することで農地の塩性化が促進する恐れのあることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨今の日中関係の悪化にともない(文章等では明確にされていないが)調査実施に多くの制限を受けており,計画当初のスケジュールをこなせていない。昨年度報告において,現地調査を3回実施にする予定としていたが,カウンターパートの新疆大学,新疆自治区政府から調査延期の指示があったため,2回しか調査ができなかった。重点調査地区の度重なる変更などもあり,現地調査・連続観測等が不十分である。また,政府系機関への聞き取り調査についても十分に対応してもらえないことが何度かみられた。2年目には完了予定の調査を最終年度に実施する必要が発生している。 一方,最終年度に予定していた比較対象地区調査(黄土高原)を実施できたため,時間的・経費的な大きな遅れ(違い)は発生しないと予測している。
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今後の研究の推進方策 |
調査最終年度にあたり,過去の調査結果と本年度の調査をもとに,水土資源利用のクリティカルレベルの策定に向けた検討をおこなう予定である。しかしながら,重点調査地区での調査に遅れが生じていること,政治的な判断によって調査が難しい点もある。そこで,重点調査地区での調査を進める一方,比較対象としての他の乾燥地域での情報収集・現地調査を並行的に実施し,若干視点を変えながら研究目的を達成するように努力する。 なお,計画していた調査ができなかったため基金の繰越が発生したが,これは次年度の調査に充てることとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画時とは現地の社会・政治状況に変化があり,調査実施において制限を受けることが多く,そのため予定していた回数,期間の現地調査が実施できなかった。そこで比較検討地区での調査に重みをつけたものの,使用額に差が生じてしまった。 最終年度は,共同研究者を含めた全員での現地調査を1回として予定していたが,2回以上実施し,データの集積を可能な限りおこなう。また,成果の公表,比較検討地区を積極的におこなう予定である。その旅費等に発生した使用差額を充てる。
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