研究概要 |
メコンデルタの常襲洪水稲作地域を対象に稲3期作実現のためのダイクシステム(輪中堤防)が周辺の水文環境に与える影響について,住民・行政機関からの聞取り調査,対象地域の上下流のメコン河水位の変動及び衛星画像の分析により以下を明らかにした. 1.メコンデルタの洪水特性とダイクシステムの特徴の把握:ベトナム国アンジャン省を対象にフルダイク地区とセミダイク地区について住民や行政機関から聞き取り調査を行い,フルダイクの効果と問題点を分析し,洪水を完全に阻止するフルダイク内農地では,土壌肥沃度の低下,病虫害の多発,水路水質の悪化などが生じていることを明らかにした. 2.メコンデルタの洪水氾濫が灌漑農地環境に及ぼす影響の解明:フルダイクとセミダイクの農地で洪水によるセディメントの堆積量,土壌の養分特性を分析した結果,洪水による養分供給は施肥量の数%に過ぎないことが分かった。ただし、湛水によるリン酸の有効化が期待できる可能性が示唆された. 3.メコンデルタ氾濫域およびダイクシステムの経年変化の把握:調査地区上下流のメコン河(ハウ川とティエン川)の水位変動及びフルダイク普及前と普及後の衛星画像を分析し,(1)アンジャン省の南側下流地点のカントー市の水位が近年上昇傾向にあること,(2)アンジャン省西側のキエンジャン省、北側のカンボジアではフルダイクの影響とみられる洪水の長期化傾向が認められた. 4.ダイクシステムがフローレジュームに与える影響の評価:洪水ピーク期の水理モデルのキャリブレーションのため,アンジャン省の西側下流域となるキエンジャン省の5地点で水位と流量の観測(2012年10月16~21日)を行った.
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