研究課題/領域番号 |
24405043
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
澤 洋文 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 教授 (30292006)
|
研究分担者 |
石井 秋宏 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 助教 (90421982)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 感染症 / 微生物 / 応用微生物 / 動物 |
研究実績の概要 |
本研究は人獣共通感染症に対する対策として、人獣共通感染症の自然宿主を特定し、その予防策を達成するために、医療環境が不備であるため感染症の発生状況が把握されていないザンビア共和国において、昆虫および哺乳類動物を対象とした疫学調査を実施する。さらに、新規高効率ウイルス遺伝子探索法を開発し、疫学調査で得られた検体から、人獣共通感染症の原因となり得るウイルスを探索・同定することを目的としている。平成26年度は以下の研究を推進した。 ザンビアに生息するトガリネズミ属の動物の糞から核酸を抽出し、次世代シーケンサー(NGS)を用いて得られた塩基配列の中からウイルスゲノムを効率的に選択するアルゴリズムを活用して、893430のリード中の726200以上のウイルスのリードを得、その中から複数の新規のウイルスのコードする塩基配列を検出し、そのゲノムを確認した。 また、ザンビアにおける疫学調査の結果、ザンビアのLeopards Hillに位置する洞窟において採集した種々のウイルスの病原体の自然宿主として重要と考えられている野生コウモリの臓器から乳剤を作成し、細胞に接種してウイルスを増殖させ、その後培養上清から、もしくは臓器から直接にRNAを抽出し、cDNAライブラリーを作成し、NGSを用いて、多数のcDNAの塩基配列を網羅的に探索した。その後web上に存在する既知の配列と比較することにより、ウイルスゲノムの配列の検出を試みた。その結果、ウイルス由来と考えられるcDNA断片の内、30,894リードはナイロウイルス属ウイルスと相同性があることが示された。更に培養細胞から新規ナイロウイルスを単離し、マウスに接種した。その結果、本ウイルスはマウスに致死性の感染症を惹起し、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスによるヒト出血熱のと類似した臨床症状・所見を呈した。 以上の得られた結果をまとめて英文雑誌に報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は人獣共通感染症に対する対策として、人獣共通感染症の自然宿主を特定し、その予防策を達成するために、医療環境が不備であるため感染症の発生状況が把握されていないザンビア共和国において、昆虫および哺乳類動物を対象とした疫学調査を実施する。さらに、新規高効率ウイルス遺伝子探索法を開発し、疫学調査で得られた検体から、人獣共通感染症の原因となり得るウイルスを探索・同定することを目的としている。 平成26年度は研究実績の概要に記載した様に、ザンビアに生息するトガリネズミの糞から核酸を抽出し、新規ウイルスとして、サイクロウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルスのゲノムを検出した。またそれらのウイルスがコードするゲノムとこれまでに報告されている同様のウイルスのゲノムの配列を用いて系統樹解析を実施し、それらのウイルスが人と動物間で感染環を形成している可能性について考察した。 また、野生コウモリから検出したウイルスゲノム断片から新規のナイロウイルスのゲノムを検出すると共に、更に野生コウモリの検体を培養細胞に接種し、その培養細胞から新規ナイロウイルスを単離した。更に、単離したウイルスをマウスに接種し、マウスに致死性の感染症を惹起し、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスによるヒト出血熱の症状と類似した白血球及び血小板の減少、肝・腎障害といった多臓器不全、腸管での出血等の症状を呈することを確認した。 前述の記載した結果から、交付申請書に記載した目的達成度は当初の計画以上に進展していると評価される。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は人獣共通感染症に対する対策として、人獣共通感染症の自然宿主を特定し、その予防策を達成するために、医療環境が不備であるため感染症の発生状況が把握されていないザンビア共和国において、昆虫および哺乳類動物を対象とした疫学調査を実施する。さらに、新規高効率ウイルス遺伝子探索法を開発し、疫学調査で得られた検体から、人獣共通感染症の原因となり得るウイルスを探索・同定することを目的としている。 平成27年度は平成26年度に実施した研究により、ザンビアの洞窟に生息する野生コウモリから単離・同定した新規ナイロウイルスであるLeopards Hillウイルスの病原性を確認するために、マウス及び細胞を用いた感染実験を実施し、病原性の発現機構を解明することを目指す。また得られた結果を国際社会に発信するため、国際学会に出席し口頭発表をすることを計画する。国際学会で外部の研究者と意見交換することにより、本研究が更に進展することが期待される。また、ザンビアでの疫学活動により採集した検体を用いて更なるウイルスを探索することを継続する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究が予想以上に進展し、新規ウイルスを単離出来たため、次年度に単離したウイルスの感染実験及びその生化学的解析をするためのキット等を新たに購入する目的で繰り越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度に実施する単離したウイルスの感染実験及びその生化学的解析をするために使用する消耗品購入に充てます。
|