研究課題/領域番号 |
24405044
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
河津 信一郎 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (60312295)
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研究分担者 |
桐木 雅史 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (50265302)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 人獣共通感染症 / 日本住血吸虫症 / フィリピン / 保虫宿主 / スイギュウ |
研究実績の概要 |
1. フィリピン中部ビサヤ地域ボホール州タリボン市およびトリニダド市:日本住血吸虫症の”低度-近撲滅レベル”流行地で調査をおこなった。スイギュウを対象としたELISA(抗体)検査、糞便(虫卵とStool-PCR [寄生虫DNA])検査をおこなった。その結果、スイギュウ(60個体)での虫卵陽性率は6.7%、ELISA陽性率は13.3% (Sj1TR抗原)およびStool-PCR陽性率は10.0%であった。 2. フィリピン中部ビサヤ地域北サーマル州カタルマン市:日本住血吸虫症の”高度”流行地での調査をおこなった。ヒト、スイギュウ、イヌを対象としたELISA検査、糞便検査、および中間宿主貝を対象とした寄生虫検査をおこなった。その結果、ヒト(393名)での虫卵陽性率は10.1%(36/358)、ELISA陽性率は61.1%(SEA抗原)であった。スイギュウ(52個体)での虫卵陽性率は20.4%(10/49)、ELISA陽性率は36.5% (Sj1TR抗原)およびStool-PCR陽性率は40.8%(20/49)であった。イヌ(16個体)での虫卵陽性率は6.3%、ELISA陽性率は37.5% (SjTPx-1抗原)およびStool-PCR陽性率は50.0%であった。また、中間宿主貝の感染率は12.8%(42/329)であった。 これらの成績から、日本住血吸虫症低度および高度流行地における日本住血吸虫症流行の保虫宿主としてスイギュウおよびイヌの重要性が指摘された。特にボホール州のようにほぼ撲滅レベルにある地域で保虫宿主の感染状況を監視することが、寄生虫の感染環の状況を把握するため重要であることが示唆された。一方、北サマール州では虫卵の脳栓塞による麻痺性の住血吸虫症の症例が多い。寄生虫の遺伝学的特性について比較解析するDNA材料を準備する目的で、フィリピン大学において、媒介貝から採取したセルカリアをマウスに感染させて寄生虫成虫を回収する実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィリピン中部ビサヤ地域の日本住血吸虫症流行低度および高度流行地域において、寄生虫病流行の保虫宿主としてスイギュウおよびイヌの重要性が指摘できた。特に低度流行地で保虫宿主での感染状況を監視することが寄生虫の感染環の状況を把握するため重要であることが示唆された。一方、ミンダナオ島など国内の他の流行地でも今回の知見を検証する必要があるため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、フィリピンの日本住血吸虫症流行地で、新たに開発したELISAプロトコールを応用して保虫宿主候補動物での血清疫学調査をおこない、各流行地で主要な保虫宿主を同定する。同時に、その動物での感染ベースラインデータを整備して、寄生虫病対策の現場に還元することを第一の目的とする。また、中間宿主貝も含めた総合的な分子疫学調査をおこない、各感染症流行地での寄生虫症の特性と寄生虫株の関係を明らかにすることを第二の目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年1月フィリピン研究者との遣り取りの中で、サーマル州調査地域に、当初予定していた村に加えて新たな感染流行村が見出された。そこで同地域におけるより詳細な疫学情報を研究するため、この村も調査対象にすることにして、調査計画を変更した。調査準備に追加の時間を要したため調査の時期を変更した。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、同地域における調査及び調査研究を次年度4月に行うこととし、未使用額は、その旅費、資料解析の物品費等に充てることにした。
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