研究課題
2014年度は、4月にミャンマー、5月および6月にベトナムの野外調査を実施し、50種以上236頭を捕獲した。これに加え、これまでの調査で捕獲したサンプルについて更に精査したところ、ベトナムの翼手目から検出されたXuan Son virus (XSV)と異なる新しい翼手目由来ハンタウイルスを検出することに成功した。検出した翼手目由来ハンタウイルスは、これまで確認されているいかなるハンタウイルスとも異なっており、陽性個体の検出された地域名からDakrong virusと命名した。一方、GenBankに登録されたハンタウイルス、本研究課題によって明らかになったハンタウイルスなど総合的に検討した結果、現在世界に分布するハンタウイルスは、全てユーラシア大陸起源のウイルスから系統学的に分岐しており、現存するウイルスはユーラシア大陸で誕生したウイルスを起源にしていることが推測された。今回、新たに新規翼手目由来ハンタウイルスを検出した為、翼手目由来ハンタウイルスについて宿主転換やスピルオーバーによる翼手目への感染拡大の可能性を検討した。その結果、翼手目由来ハンタウイルスは、齧歯目やトガリネズミ形目から宿主転換等で移動した他の宿主由来ウイルスでなく、翼手目のハンタウイルスとして宿主と共に共進化してきたウイルスである可能性が示唆された。翼手目由来ハンタウイルスの陽性率は、他の宿主由来ハンタウイルスより有為に陽性率が低いため、今後ウイルス伝搬メカニズムの解析を進め、翼手目と翼手目由来ハンタウイルスの共進化メカニズムを解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
既存の系統解析手法を用いた共進化解析では、本研究課題や既知のデータを元にした解析でハンタウイルスの起源がユーラシア大陸である可能性を推定し、現在の情報から過去を推定することが可能であった。一方、本研究課題で新たに発見した翼手目由来ハンタウイルスは、齧歯目やトガリネズミ形目同様それぞれの宿主と共に長期間共存関係にあり、宿主転換やスピルオーバーではなく共進化してきた可能性を示唆する知見が確認されたため。
これまでの野外調査で新規ウイルスの検出できた地域に再度調査を行い、ウイルス情報の収集を行うと共に、これまで断片的な遺伝子情報のみでウイルス性状の解析が不十分であったため、ウイルス分離や分離の為の多様な生物種の初代培養細胞の分離を目指す。既に分離できた細胞については、株化可能かどうか検討する。株化できた場合には、実際に分離に利用可能か検討し、利用可能な場合はウイルス分離に利用すると共に、ウイルスレセプターなど宿主因子の同定に利用する。また、これまでの野外調査で発見した新しいウイルスの情報の論文発表を目指す。
年度末納品等にかかる支払いが平成26年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成26年度分についてはほぼ使用済みである。
上記のとおり。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
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