研究課題/領域番号 |
24405046
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中井 裕 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80155655)
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研究分担者 |
多田 千佳 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30413892)
吉原 佑 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50552379)
米澤 千夏 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60404844)
田島 亮介 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60530144)
池田 実 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70232204)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | モンゴル / 水環境 / 放牧 / 病原性微生物 / 家畜生産 |
研究実績の概要 |
ウランバートルを流れるトール川の上流、中流、下流域に生息する放牧家畜の糞サンプル、および、その河川水、また、周辺の地下水等の止水についても採取し、病原性細菌の大腸菌の検出、また、寄生虫であるCryptosporidium, Giardiaについての検出を昨年度に引き続き行った。今年度は、昨年度で課題となった検出感度の問題を培養法、DNA抽出キットやPCRキットの改善によって克服し、糞サンプルの他に水からも病原性微生物の検出が見られた。トール川下流、止水は腸内細菌群汚染が顕著であり、井戸は8.1×103 CFU/mlとなり、EHEC(腸管出血性大腸菌)が検出された。また、寄生虫についても、昨年は検出されなかったがCryptosporidium,Giardiaが検出された。Giardiaは、河川上流のウシの糞からと河川下流域で検出されたGiardiaが同種であることがわかり、河川上流域の動物由来の可能性も考えられた。さらに、モデル実験では、モンゴルで家畜が利用している4種類の異なる水(トール川上流、下流、池、井戸)を49日間子羊に給与し、飲水量、羊の生産性、行動、免疫、病原性大腸菌の感染等について調査した。その結果、下流水と池の水を給与した羊の飲水量が多く、井戸水は最も少なかった。池の水を給与した羊が最も増体が良好で、他の羊と比べて平均で2kg以上増体が大きかった。井戸水を給与した羊は採食時間が短く、休息時間が長くなった。また、感染時に増加するタンパク質であるハプトグロビンの値が高かった。下流水を給与した羊は病原性大腸菌(EPEC)の感染頭数が増加していた。これらの結果から、モンゴルでは池の水を給与するのが家畜生産性の向上に適していることが明らかになった。一方で、井戸水や下流水は大腸菌を介した感染を引き起こす可能性があり、その給与には注意を要する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの計画通り、順調に進んでいる。ただし、まだ、検出感度の問題があり、河川中の病原性微生物の検出感度はさらに向上可能と考えられるため、最終年度は、その部分を改善して、河川等の水環境中の病原性微生物数も把握する必要はある。
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今後の研究の推進方策 |
河川からも培養法では、腸内細菌群が日本の排水処理後の排水以上に多く存在し、河川が動物の糞尿によって相当汚染されているのが明らかになったが、その一つ一つが、どの細菌なのか、今回は、モンゴルの研究所にある機器の問題などもあり、十分な検出ができなかった。今回は、それらの課題を改善し、河川や地下水に存在する病原性微生物の数も把握できるように調査を引き続き行い、数的にモンゴルの河川水の汚染状況を把握する。 また、今年度の結果より、モンゴルの井戸水は家畜のみならず人間も利用している重要な水であるにもかかわらず、大腸菌も多く家畜の健康性にも問題があった。そこで、来年度は井戸水が汚染されるプロセスを明らかにするため、家畜の行動、糞の井戸への流入経路、井戸の構造等を調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたのに比較して、滞在期間が短くなり、派遣人数が減少したため、その分の予算をおさえることができたたため。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度の今年は、長期の滞在、また、参加メンバー全員によるモンゴルでの調査、発表も行うことにしているため、それらに使用する。
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