研究課題
モンゴルのトール川周辺の水質に及ぼす放牧家畜の糞の影響について明らかにするため、昨年度と同様に調査を行った。調査地点は、トール川上流からテレルジ、ガチョルト、ルンにおいて、その周辺井戸やため池、動物糞便についても行った。採取した水の水質を簡易的に測定し、水サンプルの微生物培養、DNA抽出を行い、病原性微生物の中でも大腸菌、寄生虫Cryptosporidium, Giardiaについて特異的なプライマーを用いて検出した。その結果、2015年では、2014年に比較して、河川水や井戸水からの病原性微生物の検出は見られなかった。水質についても2014年に比較してよい状態であった。しかし、これは一時的な結果であり、実際の河川水や井戸水が恒常的に浄化されているかはわからない。井戸水は、2014年では、大量の大腸菌が検出され、病原性大腸菌も含まれていた。それに対し、2015年では、井戸水からの大腸菌の検出は46 CFU/mlに改善されていた。その原因に、2014年では、井戸周りは十分な囲いが施されておらず、草地表層水が容易に井戸に流れ込むものだったのに対し、2015年では、同井戸周辺に十分な加工がなされ、表層水が入り込まない形に変更されていたことが大きな要因と言える。2014年調査結果は、その年にモンゴルの研究者に伝えており、こういったデータ共有が、井戸の改善につながり、よい結果をもたらしたと言える。この他、異なる水(上流河川水、下流河川水、井戸水、池水)を実験的に子羊に飲ませ、その増体重等についても実験した。その結果、下流水を与えた羊に白血球の初期増加と下痢症状がみられ、EPEC(腸管病原性大腸菌)の検出された個体の増加(試験前2個体→試験後5個体)が確認された。よって、下流河川水と井戸水は、汚染度が高く、汚染された水を飲水することで、家畜の健康が悪化する可能性が示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Small Ruminant Research
巻: 137 ページ: 81-84
http://dx.doi.org/10.1016/j.smallrumres.2016.02.017