研究課題/領域番号 |
24405049
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
河瀬 眞琴 独立行政法人農業生物資源研究所, 遺伝資源センター, センター長 (00192550)
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研究分担者 |
渡邉 和男 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (90291806)
長田 俊樹 総合地球環境学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 名誉教授 (50260055)
竹井 惠美子 大阪学院大学, 国際学部, 教授 (90197252)
友岡 憲彦 独立行政法人農業生物資源研究所, 多様性活用研究ユニット, ユニット長 (40373253)
土門 英司 独立行政法人農業生物資源研究所, 遺伝資源国際連携室, 主任研究員 (50355658)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 農耕文化基本複合 / 植物遺伝資源 / 生物多様性 / 民族植物学 / 国際研究者交流 / フィールド調査 |
研究概要 |
アジアにおける農耕基本文化複合を、その構成要素である栽培植物および低利用有用植物等から再検討するためには、伝統的な農耕を維持している東南アジアおよび南アジアにおけるフィールド調査を実施し、すでに収集した資料の整理を開始した。 本年度の現地調査としては、半栽培植物・低活用有用植物の解析を進めるために当初ミャンマー・ザガイン地方の山村を対象と決定し、ミャンマー政府農業灌漑省との共同研究に関する協議を継続した。研究協定締結には至っていないが農業感慨省の協力を得てザガイン地方ホマリンおよびカムティ周辺で予備的な現地観察を実施した。遺伝資源の収集は行わず、現地の農家や地方市場を訪問し、用意した作物写真を用い植物の呼称(方名)や利用法等の聞き取りを行った。竹井はミャンマー国シャン州西部、マンダレー地域南部、ヤンゴン、キンプンの周辺で予備的なフィールド調査を実施した。また、長田は、言語学的および民族植物学的観点から、インドの東部を中心に、聞き取りした。渡邉、友岡は国内において資料収集とすでに収集した整理を実施した。 本年度および次年度以降の活動に関して、ミャンマーの政府関係者等と連絡調整を行い、本研究をワークプランに含む包括的研究協定の合意が整い、ミャンマー政府の承認を受けた。さらに、東南アジアおよび南アジア等の本課題の対象地域における調査において収集されたスライド約2万枚を精密画像ファイル化し、フィールドノート類は画像ファイル化の後、テキストファイル化しめた。収納したスライド画像ファイルにキーワード等を付ける作業を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査の実施は、提案していた共同研究協定に関するミャンマー側の手続きが遅れていた。農業感慨省内部での審査、農業感慨大臣の意向に基づく改訂と大臣承認、商務省の承認、法制局の承認、政府経済委員会と大統領府による確認の後、閣議での了承を受け、署名手続きに入ることができた。が、延期したにもかかわらず調査予定日までには協定署名ができず、そのため河瀨と土門はザガイン地域の調査を植物遺伝資源の収集を伴わない予備的観察として実施した。しかし、この調査は昨年実施したインドのメガラヤ州、アッサム州、ナガランド州の訪問とともに非常に情報に富んだものとなった。ラオス北部山地、ミャンマー北部カチン州、同南西部チン州、タイ北部などとの比較検討のために貴重な知見が得られたことは有意期である。本格的な調査のためミャンマー側関係者とはほぼ協定締結が目前である。一方、過去の調査および本課題による昨年度・今年度の収集したスライド等資料のデータベース化は計画以上に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は河瀨、土門、竹井、長田、渡邉がミャンマー国ザガイン地域の本格的調査を実施することを計画している。協定締結に対するミャンマー政府の了解が得られたことにより、植物遺伝資源の収集や食料農業植物遺伝資源条約に準拠した日本への導入が可能となるため、その解析を開始することを計画している。平成24年度および25年度の調査から当課題が対象としている東南アジア山岳地帯からインド北東部にかけての地域で共通する重要な農耕文化基本複合の要素と考えられるツルアズキ、シャロット、ナギナタコウジュ属植物(Elsholtzia blanda)、ホーリーバジル、ハトムギ等について解析を実施する。また、長田は年度初めよりインドの農業植物に関連した言語学的調査を継続する。 植物収集品、現地での画像、伝統的管理・利用情報を、公開を前提に整理する。画像、 来歴情報や多様性情報、現地で得た民族植物学的情報を収納するデータベースの構築は、連携研究者である竹谷の助言を得ながら、継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ミャンマーにおける現地調査、とくに植物遺伝資源の取り扱いについては植物遺伝資源とその関連分野における共同研究協定を前提に2006年から農業灌漑省農業計画局との協議を続けてきた。最近になって農業感慨省内部で審査が進み、閣議での了承を得るところまで進展したが、その署名は平成25年度には本格的な現地フィールド調査には間に合わなかった。したがって、25年度の調査は、植物遺伝資源の探索収集を伴わない予備的現地観察にとどめ、本格的な調査は平成26年度に実施することとなったため。 すでに懸案であった共同研究協定は署名の手続きにはいっており、正式に共同研究を実施し、植物遺伝資源を共同で収集し共通の研究材料とすることに対する障害はなくなった。平成26年度は、ミャンマー・ザガイン地域において、河瀨、土門、渡邉、竹井、長田が参加して植物遺伝資源学、保全生物学、民族植物学、言語学という異なる専門分野の視点に基づいて本格的な現地調査を実施する。
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