研究課題/領域番号 |
24406008
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
永瀬 久光 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (40141395)
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研究分担者 |
中西 剛 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (50303988)
井戸 章子 岐阜薬科大学, 薬学部, 助手 (00336629)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水環境 / フィブラート / PPCPs / PPAR |
研究概要 |
本研究では、水資源が乏しい中国の大都市の一つである北京近郊の河川水、下水および下水処理水を対象に、最近世界的に汚染が懸念されている医薬品やパーソナルケアー製品起源の化学物質(PPCPs)の中でも特に環境蓄積性が疑われているフィブラート系薬物の河川や下水中の存在実態を明らかにし、中水からの汚染物質除去策を見出すことを最終目標としている。今年度は、中国国内で使用されているbenzafibrate(BF)、fenofibrate(FF)、gemfibrozil(GF)およびその代謝物であるclofibric acid(CF)とfenofibric acid(FA)のLC-MS/MSにおける分析条件の検討とこれらの物質の標的分子である核内受容体peroxisome proliferator-activated receptor (PPAR)αのリガンド活性を検出できるレポーターアッセイ系の構築を行った。検討の結果、1.LCの移動相にはメタノールと0.1%酢酸を、逆相カラムにはUPLC BEH C18を用いる条件が分離能に優れる、2.MSスペクトルの検出はエレクトロスプレーイオン化法を用い、CF、GFについては陰イオンモードで、BF、FF、FAについては陽イオンモードで測定すると良好なシグナルが得られることが判明した。 一方でレポーターアッセイ系の構築はマウス肝癌細胞Hepa1-6細胞に、PPARαとretinoid X receptor (RXR)発現ベクターおよびPPAR応答配列下にルシフェラーゼを連結したレポーター遺伝子を導入して最適条件を検討したところ、fenofibrate 10μMで陰性対照群の5倍以上、100μMで10倍以上の活性上昇を示す条件を見出した。 さらに河川および浄水場から水検体のサンプリングも行った。 今後はこれらの検出系を用いて、採集した検体の分析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最初のハードルはフィブラート系薬物を良好な感度で分析できる手法(条件)の探索であったが、物質ベースの分析に関しては初年度にその条件を確定することができた。また生物活性ベースの検出に関しては、フィブラート系薬物がPPARαアゴニスト活性を示すものの、その強度は他の核内受容体アゴニストと比較すると弱いため、感度良く検出できる系の構築が難題であった。酵母の転写因子であるGAL4のDNA結合領域とPPARαリガンド結合領域を融合したキメラ受容体を用いたレポーターアッセイ系等を作製するなど試行錯誤したが、Hepa1-6細胞に、PPARαとRXR発現ベクター、PPAR応答配列をもつレポーター遺伝子を導入することで、μMレベルで検出できる評価系を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は日中間の政治的問題等により思うように中国国内で検体を回収することができなかったが、今年度は確立した分析手法を元に、予試験的にいくつかの環境サンプルを測定し、どのような地域や施設の検体を採取するのかを再検討する予定である。この結果次第では、北京以外の場所でも検体の採取を行うことを想定している。また中国の共同研究者と密接に連絡を取るために、日本でも会合を行い、お互いの分析技術について意見交換等を行う予定である。さらに培養細胞よりもより簡便に生物活性が測定できる技術の開発も積極的に進め、中国でも活性をハイスループットに測定できるようにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は日中の領土問題等により、思うように中国で検体を回収することができなかったため、結果的に旅費がかなり節約されてしまった。今年度は確立した分析手法を元に、精力的に環境サンプルの測定を行うために、フィールド活動に予算を充てると共に、本研究をさらに推進させるため' に、中国の共同研究者を国内にも招き、意見交換等も積極的に行う予定にしている。
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