研究課題/領域番号 |
24406016
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
山崎 伸二 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (70221653)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腸管出血性大腸菌 / アルゼンチン / タイ |
研究実績の概要 |
アルゼンチンにおいては、バイアブランカ近郊の河川11カ所から水を採取し、増菌培養後stx遺伝子をPCR法で検出した。その結果、1検体でstx1とstx2の両遺伝子が、4検体でstx2遺伝子のみ検出された.牛直腸スワブ50検体からPCR法でstx遺伝子を検出した結果、stx1単独陽性が1検体、stx2単独陽性が8検体、stx1とstx2の両遺伝子陽性が9検体であった。昨年度牛から分離したSTEC(stx1陽性3株、stx2陽性32株、stx1/stx2両陽性9株)の病原因子プロファイルを調べた結果、7検体でeae遺伝子が、11検体でsaa遺伝子が、35検体でlpfA遺伝子が、9検体でastA遺伝子が陽性であった。stx2遺伝子のサブタイピングを行なった結果、stx2aが13株、stx2cが11株、stx2a/stx2cが3株と病原性が強いと言われているサブタイプが全体の約7割を占めた。残りは、stx2a/stx2dが9株、stx2gが3株、stx2b/stx2c/stx2gが1株あった。患者由来株はHUS由来が4株、そのうち、O157でstx2陽性株が3株、non-O157でstx2陽性株が1株で、この株は死亡した1歳3ヶ月齢の患児由来であった。血清型は現在解析中である。また、HUSを発症し、stx2陽性のO157が分離された1歳8ヶ月齢の男児の父からstx1陽性のnon-O157が、母からはstx2陽性のO157が分離された。Stx2陽性のO157が血性下痢を呈した3名の小児から分離された。水様性下痢症の幼児からはstx1陽性のnon-O157が分離された。 タイの検体について、285頭の牛から糞便検体中のstx遺伝子を検出した。その結果、184検体からstx遺伝子が検出され、そのうちstx1単独陽性が30検体、stx2単独陽性が17検体、stx1/stx2両陽性が137検体あった。 今後分離したSTECの代表的な株を選び、stx遺伝子のサブタイピング及びStx1、Stx2の産生性の比較を行ない、アルゼンチン、タイ及び我が国の分離STEC株の細菌学的性状を比較することで、なぜアルゼンチンで重症患者が多発するかについて明らかにして行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3年目を終えたが、タイでの政情不安が一昨年度から昨年度まで続いたため、タイでの疫学調査や、STECの分離及び細菌学的性状解析がやや遅れている。タイの性状も安定してきたことで、タイでの研究に注力し、特に遅れている分離菌の細菌学的性状解析、病原因子プロファイリングや毒素産生性について加速させて行く予定である。
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今後の研究の推進方策 |
疫学調査はほぼ終えた。PCRでstx遺伝子が検出された検体を中心にSTECの分離を行なっていく。既に分離したSTECとあわせて、分離菌の細菌学的性状、病原因子プロファイルや毒素の産生等を調べ、環境、家畜及び患者由来株の性状について3国間での比較解析を加速させ、当初の目的を今年度中に達成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
タイで政情不安があったためタイへの渡航を控えたことと、その結果研究が予定どおり出来なかったことから、旅費や物品費の一部が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度はタイへの渡航も計画しており、旅費も増額となる予定である。また、実験のスピードを上げるため人件費としても一部計上し、試薬等も購入し予定どおりの研究成果を挙げれるよう研究費を使用する予定である。
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