研究概要 |
中国江蘇省宣興市におけるプロモプロパン工場を訪問し、プロモプロパン生産状況を調査した。さらに過去の調査において健康診断を行った労働者のフォローアップを行った。同時に日本で発生した新しい1-プロモプロパン中毒症例の解析を行い、中国における疫学研究の健康診断項目の再検討を行った。症例の神経学的所見として生来の発達障害はあるものの意思疎通は十分に可能、意識清明で,高次脳機能障害は認めず、脳神経領域でも明らかな異常は認めなかった。運動系では両上下肢で遠位優位に徒手筋力テスト4程度の筋力低下を認め,腱反射は下肢で亢進していた.Babinski徴候は両側陰性であった。四肢の運動失調,開脚歩行を認めた.指鼻試験が両側とも拙劣であった。感覚系では表在覚障害として下肢温痛覚低下を認めた.深部覚では,振動覚は両上肢で低下(6秒16秒),両下肢で消失を認めたが,位置覚の障害は認めなかった.四肢の異常感覚(しびれ感)および疼痛を認めた.Romberg徴候が陽性であった。自律神経系は異常所見を認めなかった.運動神経・感覚神経ともに下肢優位に遠位潜時延長,振幅低下,伝導速度低下を認めた。ときほぐし線維法で約30%に軸索障害を示唆するmyelin ovoidを認めた。エポン包埋標本(トルイジンブルー染色)では大径有髄線維の減少と大径線維の10~20%に軸索腫大や軸索消失,myehn ovoidといった軸索障害を示唆する所見を認めた。 脱髄や炎症細胞浸潤,血管炎の所見は認めなかった。
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