研究課題/領域番号 |
24406019
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
上島 通浩 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80281070)
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研究分担者 |
那須 民江 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (10020794)
山ノ下 理 中部大学, 生命健康科学部, 講師 (50424924)
内藤 久雄 藤田保健衛生大学, 医学系研究科, 講師 (90547556)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トリクロロエチレン / 重症薬疹 / 過敏性症候群 / ヒトヘルペスウィルス6型 / 有機溶剤 |
研究実績の概要 |
有機溶剤トリクロロエチレン(TRI)による、重症薬疹に酷似し生命に危険が及ぶ全身性皮膚・肝障害が中国で多発している。従来の労働衛生対策では発症の完全予防は困難で、個人の発症・重症化リスクをより正確に評価できる方法の確立が求められている。これまでの研究で、患者の予後を左右するヒトヘルペスウイルス6型の再活性化と、炎症性サイトカインのプロファイルとの関連が明らかになっている。 血中サイトカイン濃度に関して、TRIに3か月以上曝露しても全身性皮膚・肝障害を発症しない作業者96名と、職場でTRIを使用しない非曝露作業者51名でTNF-alphaおよびIL-10を測定した。TNF-alphaについては、曝露作業者で定量下限値を超える者はみられなかったが、非曝露作業者では5名(10%)が定量下限値を超え、定量下限値を超えた者が有意に多い結果であった。一方、IL-10濃度は曝露作業者2名(2%)で定量下限値を超え、非曝露作業者で定量下限値以上の者はみられなかった。群間で有意差はみとめられなかった。 感受性マーカーであるHLA-B*13:01と曝露マーカー尿中トリクロロ酢酸(TCA)に関して、昨年に引き続き対象者を増やして測定をおこなった。患者と性、年齢をマッチングした曝露作業者を1:3の比で割り付け、曝露と疾患との関連を検討した。HLA-B*13:01がリスク要因であることが改めて確認されるとともに、尿中TCA濃度5 mg/Lをカットオフ値として5 mg/L未満を参照カテゴリーとするオッズ比を計算したところ、5 mg/L以上の群でオッズ比の有意な上昇をみとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HLA-B*13:01、曝露量と患者発生の関係については、尿中代謝物量に関して当初の予想以上に低い閾値の存在が明らかになった。その一方、曝露とHHV-6再活性化との関係についてははっきりしない点が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
血清中自己抗体の検出をめざすとともに、予防と患者早期発見のためのバイオマーカーの検討を継続する。海外研究協力者と討論しつつ、調査を継続して行う。また、これまでの成果に関して、論文化を積極的に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
渡航予定者(研究協力者)1名が直前に旅行を中止せざるを得なくなった。また、サブクローニングが順調に進んだため、当初想定したより消耗品の購入が少なくすんだ。
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次年度使用額の使用計画 |
最新の研究成果を曝露濃度が相対的に高い中国のトリクロロエチレン使用職場で活かすために、海外共同研究者を含む中国側研究協力者との討論、打ち合わせを充実させる。また、成果発表をより積極的に行う。
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