研究課題/領域番号 |
24406026
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
諸井 雅男 独立行政法人国立国際医療研究センター, 循環器内科, 科長 (30256721)
|
研究分担者 |
水谷 太郎 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80181890)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 南アジア / 若年冠動脈疾患 / 危険因子 / 予防法 / 日本 / 比較 / バイオマーカー |
研究概要 |
冠動脈疾患は、発展途上国において、特に若年者の主要な死亡原因となっているが、南アジアでは若年性冠動脈疾患に関する研究はほとんどない。本研究は、グラミン健康財団(ノーベル平和賞受賞ムハマドユヌス教授)と国立国際医療研究センターが協力し、有病率調査や遺伝学的素因評価など、冠動脈疾患の危険因子に対する包括的調査を行う。本研究の成果は、南アジアなど発展途上国において急速に進行する疾病研究の基盤となるものである。南アジアの若年者に特有な危険因子の探索、壮年および若年患者間の危険因子の層別化、新しい冠動脈危険因子と現在知られている危険因子との比較、性別に特徴的な危険因子の調査、若年性冠動脈疾患に影響する遺伝学的・環境的要因の解明を目的とする。 今年度は、冠動脈疾患患者における前向き観察研究として、壮年および若年の冠動脈疾患患者間の比較を社会経済学的および遺伝学的手法をもちいて行うため、バングラデシュ人167名の血液検体を得た。またバングラデシュの地方における横断研究として、45歳以上と45歳未満で冠動脈疾患危険因子の有病率を評価するため、1,500名のデータを収集した。これらの血液を検体として、数種類のバイオマーカー測定を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の一年目が完了した。本研究はバングラデシュのダッカ、ラジュシャヒ地区、日本の東京、茨城、伊勢原において開始された。今年度は前向き観察研究としてバングラデシュ人167名の血液検体を得た。横断研究としては、1,500名のデータを収集した。これらの血液を検体として、数種類のバイオマーカー測定を開始した。 心臓発作の最も重症なタイプは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)であるが、バングラデシュ国のSTEMI患者を対象として、45歳未満vs.45歳以上の年齢2群階層間での比較を行った。糖尿病罹患率、高血圧、低HDL血症のそれぞれにおいて、糖尿病罹患率二27.27%vs.72.73%:高血圧:13.64%vs.86.36%。また低HDL血症患者群の平均HDL値は、40.78mg/dlvs.47.62mg/dlであった。また、非STEMIについては、バングラデシュ人の集団では高血圧が主なリスク因子であると考えられた。血漿コレステロール値とトリグリセリド値は、45歳未満と45歳以上の患者では、平均値が有意に異なっていた。不安定狭心症の患者に関しても、血漿HDL値は45歳未満と45歳以上の患者で有意に異なっていた。バングラデシュ国の農村部女性を対象とした横断調査では、罹患率の高い3つの心血管系疾患リスク因子の各陽性率は、低H肌血症87.5%、空腹時血糖値高値31.3%、そして高血圧28.6%であった。
|
今後の研究の推進方策 |
前向き観察研究と断面研究の両方の継続と、心血管疾患の有無に関するケースコントロール研究を計画している。現在、我々は、日本国とバングラデシュ国の両国において、急性心血管系疾患に関連したバイオマーカーを測定中である。24年度、我々は急性心血管系疾患に関する2つの論文を発表した(Moroi,JesminetaD。急性心血管系疾患の罹患率とリスク因子の分布に関する、バングラデシュ国と日本国の両国間における比較研究を行っている。バングラデシュ国で入院治療中の患者を対象とした研究では、低HDL血症は急性心血管系疾患の発症に有意なリスク因子である事が判明したが、これは、同国の健常な農村部女性を対象とした我々の先行研究とも一致した結果である。我々は、心血管疾患の罹患率に対する環境要因、および遺伝子多型分析を計画している。 アジア世界において、その先進国の一つである日本と、発展途上国の一つであるバングラデシュとの両国の健康障害を、環境因子と遺伝因子の両面を背景として、心血管系疾患とそのリスク因子の観点から解析する事ができれば、世界に先駆けた発信ができると考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、血液を検体として数種類のバイオマーカーを測定したが、高度なバイオマーカーを測定するための試薬の購入に遅れが生じた。高度なバイオマーカー測定のための試薬代及びそのための人件費は次年度使用する予定である。 前向き観察研究は、壮年および若年の冠動脈疾患患者間の比較、また男女間比較を、社会経済学的および遺伝学的手法を用いて、シャヒド・ジアウル・ラフマン医科大学および付属病院、バングラデシュ国立循環器病センター、イブラヒム心臓病センターの各施設で行う。急性冠症候群の臨床症状および冠動脈造影検査で所見のある45歳未満の患者約400名を対象とする。 バングラデシュの地方における横断研究では、45歳以上と45歳未満で冠動脈疾患危険因子の有病率を評価する。バングラデシュのダッカ、ラジャヒ地区における冠動脈疾患の危険因子を見出す。我々の先行研究結果との比較も考慮し、これまでと同様に、患者は15-75歳とする。すべての研究参加者はインフォームドコンセントされる。
|