研究課題
糖尿病性腎症は最大の慢性腎臓病（CKD）であり、その克服は喫緊の課題である。本研究の目的は、アジア地域における糖尿病性腎症の予後調査、予後規定因子の解析および本邦との国際比較を行うことである。これまで、本邦の腎生検を施行した2型糖尿病に伴う糖尿病性腎症260例の長期予後の解析を行った(Diabetes Care 2013)。アルブミン尿は、腎予後、心血管系疾患発症、生命予後に強い影響を及ぼす因子であった。一方、腎機能低下はアルブミン尿例の腎予後に特に強く影響した。これらをもとに本邦の糖尿病性腎症の予後関連因子、予後判定のための臨床的スコアリングシステムを確立した（Clin Exp Nephrol 2014）。これらは改訂された糖尿病性腎症病期分類2014の基礎データとなった。これらの研究から得られた関連因子、スコアリングを用いて、国際的にアジア系人種のコホート間で比較、検証を行った。日本腎臓学会総会、アジア太平洋地域に於けるCKD対策の共同行動組織であるAFCKDI(Asian Forum of CKD Initiative)と密接に連携し、アジアでの糖尿病性腎症の国際共同研究体制を構築した。そのうえで、アジア特有のリスク解析を進めている。実際、台湾の高雄醫學大学ならびに国立台湾大学のコホートで検証を行い、本邦の予後推定スコアリングシステムが有効であることを示した。アジア系人種間での比較、検証のため、既存の韓国、台湾、オーストラリアのコホートを用いた国際比較も進行している。本研究の成果は、糖尿病性腎症の本邦のスコアリングを用い、アジア諸国のコホートの予後調査と国際比較を融合させたユニークな視点による。本邦の糖尿病性腎症の克服にむけた総合対策の一環であるとともにアジア地域の医療改善にむけた研究が推進し得、アジア全般の福祉向上に寄与する可能性がある。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 図書 (3件)
Clin Exp Nephrol
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