研究課題/領域番号 |
24406032
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川上 和義 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10253973)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | クリプトコックス・ガッティ / 中国 / 高病原性 / 遺伝子タイプ |
研究概要 |
1999年にカナダのバンクーバー島でCryptococcus gattii によるクリプトコックス症のアウトブレイクが発生し、その後アメリカ合衆国の北西沿岸地域を中心に拡大しつつある。2007年には、わが国でも国内感染と考えられるC. gattii によるクリプトコックス症例が報告されている。一方、中国南部では熱帯・亜熱帯地域が拡がっていることから以前よりC. gattii VGIの存在は知られていたが、最近バンクーバーアウトブレイクのマイナータイプVGIIbが検出されたとの報告がなされ、今後の動向を注視する必要がある。本研究では、中国南部の中心都市である広州市を拠点にC. gattii 感染症の発生動向を調査し、本真菌の浸淫状況を明らかにすることを目的とする。 前年度に引き続き研究協力機関である広州市の中山大学医学部附属第三医院の呼吸器内科及び伝染病科においてクリプトコックス症例登録を行い、新たに13症例が追加された。平成25年11月に研究代表者が中山大学を訪問し、各症例について臨床情報を収集し、10症例がクリプトコックス髄膜炎、1症例が肺クリプトコックス症+髄膜炎、1症例が肺クリプトコックス症、1症例がクリプトコックス胸膜炎であることが分かった。基礎疾患として、エイズ、糖尿病、自己免疫疾患、肝硬変、悪性腫瘍の合併がみられた。12症例の髄液及び1症例の肺組織から合計13株のクリプトコックス株が分離され、抽出したDNAからPCRを用いて種の鑑別を実施したところ、すべての株がCryptococcus neoformansであることが判明し、今年度はC. gattii症例が1例もみられなかった。さらに、昨年度のC. gattii 1株を除く11株を合わせた合計24株について7遺伝子を用いたmultilocus sequence typing(MLST)法によりgenotypingを実施している。今後は、中国で分離されるC. neoformansについても遺伝子型を明らかにし、我が国のものとの相違点について検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は13症例のクリプトコックス髄膜炎、肺炎の患者が登録され、特に11症例が髄膜炎であり、1病院の症例数としては極めて多く、日本ではこれだけの症例数を集めるのは容易ではないと考えられる。さらに、全症例から菌株が得られており、今年度はCryptococcus gattiiは1株も検出されなかったが、本真菌の侵淫状況を解析する上では十分な症例数が登録されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析から、中国ではCryptococcus gatti感染症がそれほど多くないことが明らかになりつつある。平成26年度も引き続き症例登録を進め、可能であれば3年間で合計40~50症例を目指し、本研究の目的である中国でのCryptococcus gatti感染の侵淫状況について一定の結論を導きたい。併せて、C. gattiiとともに、C. neoformansについてもgenotypingを行い、系統樹解析にて日中間の菌株について比較検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
Cryptococcus gattii感染症の症例数が少なかったため、中国における侵淫状況について一定の結論を示せるように、最終年度にワークショップを開催する方向で研究協力者と調整を行なった。そのため、ワークショップの開催に必要な予算を次年度使用とすることになった。 3年間の研究の集大成として平成26年11月にワークショップを開催する経費として、平成26年度分とあわせて使用する。
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