研究課題/領域番号 |
24500002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
塩浦 昭義 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (10296882)
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キーワード | 整数計画問題 / 非線形関数 / アルゴリズム / 離散最適化 / 離散凸解析 |
研究概要 |
本研究では,非線形な不等式制約の下で非線形関数を最大化するという整数計画問題を扱う.この問題は極めて一般的な形をしており,多数の応用例が存在する.本研究を通じて,非線形整数計画問題に対する新たなアルゴリズム技法を提案するとともに,理論面のみならず,実用面でも有用な解法を提供する. 前年度に引き続き,複数ナップサック制約の下でのM凹関数最大化問題に対し,「連続緩和アプローチ」に基づくアルゴリズム開発の研究を進めた.連続緩和アプローチでは連続緩和問題を解く必要があり,そのために楕円体法と呼ばれる解法を利用した.楕円体法の計算量解析はきわめて複雑であるが,アルゴリズムの各ステップごとに詳細に解析を行い,各入力パラメータに計算量がどのように依存しているかを明確にした.とくに,近似誤差パラメータに指数的に依存するステップとそうでないところを明らかにした.この結果は今後の研究において有用であると考えられる. さらに,本年度はナップサック制約の下でのM凹関数の和の最大化問題に取り組み,「ラグランジュ緩和を用いたアプローチ」に基づきアルゴリズム開発を始めた.これは来年度も継続の予定である. また,この研究から発想を得て,最短路問題に対するダイクストラ法と離散凸関数最小化アルゴリズムの関係を明らかにすることができた. 研究の遂行のために,ハンガリーおよびアメリカで開催された国際会議や国内の学会・ワークショップ等に参加し,関連分野での最新の研究成果を調査すると共に,他の研究者との情報交換を行い,非線形線形計画に関する新たな知見を得ることができた.得られた情報については,来年度の研究に活用する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き,複数ナップサック制約の下でのM凹関数最大化問題に対し,「連続緩和アプローチ」に基づくアルゴリズム開発の研究を進めた.連続緩和アプローチでは連続緩和問題を解く必要があり,そのために楕円体法と呼ばれる解法を利用した.楕円体法の計算量解析はきわめて複雑であるが,アルゴリズムの各ステップごとに詳細に解析を行い,各入力パラメータに計算量がどのように依存しているかを明確にした.とくに,近似誤差パラメータに指数的に依存するステップとそうでないところを明らかにした.この結果は今後の研究において有用であると考えられる.このように,制約つきM凹関数最大化問題については期待通りの研究成果が得られた. さらに,本年度はナップサック制約の下でのM凹関数の和の最大化問題に取り組み,「ラグランジュ緩和を用いたアプローチ」に基づきアルゴリズム開発を始めた.これは来年度も継続の予定である.本研究では,パラメータ値をより良いものへと繰り返し更新しながら,ラグランジュ緩和問題を繰り返し解き,より良い近似解を求めるという手法について検討する.また,パラメータ値を改善してもラグランジュ緩和問題から得られる解の品質が改善されない場合には,異なるパラメータ値に対するラグランジュ緩和問題の解を求めた後,それらを上手に合成して良い近似解を作る手法についても検討する.この問題の研究については,まだ成果が不十分であり,来年度のさらなる進展が望まれる.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,「ラグランジュ緩和を用いたアプローチ」に基づくアルゴリズム開発の研究を進める.ラグランジュ緩和とは,元の問題(NLIP-MC)の不等式制約を除去する代わりに,解が不等式条件に違反している場合にはペナルティとして,違反の程度に応じて目的関数の値を減少させる,という緩和手法である.ペナルティの値はあるパラメータにより決定されるが,このパラメータを適切に設定することにより,元の問題の良い近似解が入手できる.ラグランジュ緩和アプローチでは,パラメータの設定方法が重要である.パラメータを大きすぎる値に設定すると,得られる解は実行可能解ではあるものの最適解からほど遠くなり,一方,小さすぎる値にすると,得られる解は最適解に近いものの実行可能ではなくなる.本研究では,パラメータ値をより良いものへと繰り返し更新しながら,ラグランジュ緩和問題を繰り返し解き,より良い近似解を求めるという手法について検討する.また,パラメータ値を改善してもラグランジュ緩和問題から得られる解の品質が改善されない場合には,異なるパラメータ値に対するラグランジュ緩和問題の解を求めた後,それらを上手に合成して良い近似解を作る手法についても検討する. なお,最終年度となる来年度においては,提案したアルゴリズムを計算機上で実装し,様々な問題例を用いて計算機実験を行って,実用面での性能を評価する.実験結果を踏まえ,アルゴリズムのさらなる改良が可能かどうかを検討する.本申請課題で得られた研究成果については国内外の学会等で発表し,関連分野の研究者からの評価を仰ぐ.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は2013年9月頃に助成金を利用して国内外の研究者を訪問して議論を行う予定であったが,その計画を立てた後にスウェーデン・ウプサラ大学のKiselman氏より研究訪問および現地での講演依頼があったため,やむを得ずそちらを優先し,一週間程度スウェーデンを訪問することにした.この海外出張の費用は招待者側の負担だったため,当初使う予定の助成金が50万円程度残ってしまった. 来年度は研究期間の最終年度なので,国内外の学会,シンポジウムにて発表を数多く行い,研究者と議論を行うとともに研究成果の評価を仰ぐ予定である.そのために,多額の旅費を使う予定である.とくに,今年度残った助成金を有効活用して,海外を訪問する回数および期間を当初の計画より多く設定することにより,研究活動をより実りあるものとすることを考えている.
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