研究課題/領域番号 |
24500002
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
塩浦 昭義 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (10296882)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 整数計画問題 / 非線形関数 / アルゴリズム / 離散最適化 / 離散凸解析 |
研究実績の概要 |
本研究では,非線形な不等式制約の下で非線形関数を最大化するという整数計画問題を扱う.この問題は極めて一般的な形をしており,多数の応用例が存在する.この問題に対しては様々な近似解法が提案されているが,解の精度および計算時間という重要なファクターに対して理論的な保証を与えているものは殆ど存在しない.本研究の目的は,解の精度および計算時間に関する理論的な保証を与える近似解法を開発することである.本研究を通じて,非線形整数計画問題に対する新たなアルゴリズム技法を提案するとともに,理論面のみならず,実用面でも有用な解法を提供する. 本年度は,ナップサック制約の下でのM凹関数の和の最大化に継続して取り組んだ.部分的には良い結果が得られ,その結果については論文として発表された.このテーマについては現在も研究協力者と共に議論を進めており,より良い結果が得られそうな状況となっている. この研究テーマと関連して,スケジューリング問題から生じる非線形制約に関する離散最適化問題に取り組み,様々な新しい結果を得ることが出来た. これらの成果を得るために,ドイツ・ボンでの離散最適化に関する国際会議に参加し,除法収集を行うと共に,他の一流研究者と討論を行った.また,国内の各種会議にも参加し,最新の研究成果に関する情報を得ると共に,関連分野の研究者と議論を行った.このような機会は,研究を推進する上で非常に有意義であった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度より,ナップサック制約の下でのM凹関数の和の最大化に継続して取り組んでいる.部分的には良い結果が得られ,その結果については論文として発表された.このテーマについては現在も研究協力者と共に議論を進めており,より良い結果が得られそうな状況となっている. この研究テーマと関連して,スケジューリング問題から生じる非線形制約に関する離散最適化問題に取り組んだ.これまで,この問題にはスケジューリング問題の構造を利用した専用の解法が提案されてきた.これに対し,本研究ではまず,劣モジュラ最適化問題との関係を明らかにした.さらに,代表者がこれまで取り組んできた,別のタイプのスケジューリング問題と密接な関係をもつことがわかった.これらの関係に基づき,様々な研究成果を得ることが出来た.まず,このスケジューリング問題の既存解法が,劣モジュラ最適化問題に対する既存解法の特殊ケースとして見ることができるということを明らかにした.さらに,この知見を生かして,より高速な解法を構築することが出来た.本研究による,劣モジュラ最適化からの視点は斬新なものであり,今後もさらなる結果が得られると期待される.
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,「ラグランジュ緩和を用いたアプローチ」に基づきアルゴリズム開発を進める.ラグランジュ緩和アプローチでは,パラメータの設定方法が重要である.パラメータを大きすぎる値に設定すると,得られる解は実行可能解ではあるものの最適解からほど遠くなり,一方,小さすぎる値にすると,得られる解は最適解に近いものの実行可能ではなくなる.本研究では,パラメータ値をより良いものへと繰り返し更新しながら,ラグランジュ緩和問題を繰り返し解き,より良い近似解を求めるという手法について検討する.また,パラメータ値を改善してもラグランジュ緩和問題から得られる解の品質が改善されない場合には,異なるパラメータ値に対するラグランジュ緩和問題の解を求めた後,それらを上手に合成して良い近似解を作る手法についても検討する. また,提案したアルゴリズムを計算機上で実装し,様々な問題例を用いて計算機実験を行って,実用面での性能を評価する.実験結果を踏まえ,アルゴリズムのさらなる改良が可能かどうかを検討する.本課題で得られた研究成果については国内外の学会等で発表し,関連分野の研究者からの評価を仰ぐ.
|
次年度使用額が生じた理由 |
26年度には離散凸関数の最小化アルゴリズムの解析に取り組み,その成果を論文にまとめた上で,この分野の専門家の評価を仰ぐと共に,国内外の各種学会,シンポジウムなどで発表を行う予定であった.しかし,アルゴリズムの解析に予想以上に時間を要し,そのとりまとめの完了が遅れたために,計画を変更せざるを得ず,次年度使用額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
我々の研究に対して,離散最適化分野の専門家の評価を仰ぐと共に,国内外の各種学会,シンポジウムなどで発表を行うこととし,未使用額はその経費に充てる予定である.
|