本研究の目的は,非線形整数計画問題に対して,解の品質及び計算時間の両面で理論的な保証をもつ解法の開発である.本年度は,不可分財のオークションへの応用から生じる,M凹関数の制約付き最大化問題に取り組んだ.この問題を効率的に解くためのアプローチとして,本研究では離散凸解析における離散共役性に基づき,L凸関数最小化問題に帰着して解く,というアプローチを用いた.このアプローチは,オークションの立場から見ると,財の最適な配分を求めると言う問題を,財の最適な価格を計算するという問題に置き換えることに対応するので,それ自身有用な問題である.
本年度は,上記の帰着で得られたL凸関数最小化問題に対し,既存の最小化アルゴリズムを適用すると共に,その反復回数を理論的に解析し,厳密な反復回数が初期解と最小解の距離を用いて与えられることを示した.最小化アルゴリズムの反復回数については過去の研究でも解析が行われていたが,本研究では厳密な反復回数を示したと言うことで,より強い結果を得たことになる.これにより,最小化アルゴリズムが初期解から最も「近い」最小解を出力すると共に,最小化アルゴリズムによって生成される解の軌道が,初期解から最小解への「最短路」となることがわかった.また,不可分財へのオークションへの応用を念頭に置いて,解ベクトルを最初に単調増加させ,その後に単調減少させるという,新たな最小化アルゴリズムを提案するとともに,その反復回数の上界を示した.
これらの研究成果については,2015年7月に開催の国際数理最適化シンポジウムにおいて発表を行い,関連分野の研究者と議論を行った.また,関連する問題について東北大学の徳山豪教授および大学院生の山川秀晃君と数回のディスカッションを行った.
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