平成24年度から平成25年度にかけて、本研究では、秘密鍵の一部が漏洩しても安全なIDベース暗号方式、および内積暗号方式を構成した。メールアドレスなどの任意のビット列(identity)を公開鍵として用いることができるような公開鍵暗号方式を、IDベース暗号方式という。 この成果を基に、平成27年度においては、暗号文サイズ、および秘密鍵サイズが小さい、匿名IDベース暗号方式を開発した。暗号文から、宛先のIDがわからないIDベース暗号方式を、匿名IDベース暗号方式という。DLIN仮定の下において、従来の方式では、暗号文、秘密鍵とも、5つの群要素からなる。これに対し、本方式では、暗号文、秘密鍵とも、4つの群要素からなる。より一般的に、k-LIN仮定の下において、従来の方式では、暗号文、秘密鍵とも、2k+1個の群要素からなる。これに対し、本方式では、暗号文、秘密鍵とも、2k個の群要素からなる。 さらに、各identityの秘密鍵からそのidentityに関する情報が漏れないような匿名IDベース暗号方式を、関数秘密匿名IDベース暗号方式という。この暗号方式を用いると、キーワードを秘密にしたまキーワード検索が可能となるような方式を構成できることが知られている。本研究では、上記の匿名IDベース暗号方式を基に、従来の方式よりも暗号文サイズ、秘密鍵サイズ、公開パラメータのサイズが小さい関数秘密匿名IDベース暗号方式を開発した。
|