平成28年度は、前年度に引き続きこれまでに得られた成果をまとめて、システムを一つに統合した。得られた成果に対する総合的な評価を行い、必要に応じて、これまでのシステムの改良を行った。また電子商取引や電子投票、電子アンケートなど、匿名認証システムの応用面で高い安全性が求められるマルチパーティ型のシステム開発についても明示的に検討を行った。特にシステムの実用化は、実社会で求められる匿名認証の解決手段、またはその普及のためにも重要であると考え、特に重点的に取り組んだ。また、コンピュータシステムの代表的な評価指標である「信頼性」「可用性」「保守性」「保全性」「安全性」の検証を合わせて行った。 上記の要素技術として利用するため、CAPTCHA の研究についても推し進めた。従来のように特定知覚により人間とロボットを区別するのではなく、人間がもつ文意文脈の理解能力により認証するバリアフリー型CAPTCHA方式について検討した。特にワードサラダ識別問題の作問アルゴリズムについて、認証強度の観点から安全性を評価した。本研究の特徴として、マルコフ連鎖に基づき生成したワードサラダに対して子音交替をおこなったものを比較対象とし、人間の文章に対する文意文脈を解釈する能力を判断するといったものがある。アルゴリズムの構成要素は、(a)公開文章のコンテンツ選択、(b)類似語の利用、(c)偽の話題の混入、となっており、それぞれの要素に対し、情報漏えいや認証強度の危殆化について評価を行った。これらの研究で得られたアルゴリズムや手法の一部は、主に昨年度から構築してきた匿名認証システムにも適用した。
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